[東京/パリ 13日 ロイター] – 日産自動車と仏自動車大手ルノーとの提携関係見直しに関する協議が長引いている。電気自動車(EV)関連の特許など知的財産の取り扱いで両社の主張には依然、隔たりがあり、同時に進めているルノーによる日産への出資比率引き下げ交渉も合意に至っていない。年内の決着は厳しい情勢だ。交渉に詳しい日産関係者4人が明らかにした。
関係者の1人は「知的財産など詳細を詰める必要がある」と説明。EV新会社の上場を2023年後半に予定するルノーが日産との合意を急いでいるのに対し、日産側は第三者企業への技術流出の懸念もあり、「もっと時間をかけて話し合うべき。年内に決着させるのは時期尚早だ」と反対する声が強い。
別の関係者は「経済産業省も合意を急いでいない」という。欧州では来週からクリスマスなどの長期休暇に入るため、複数の日産幹部が「年内の合意はかなり厳しい」と話している。
ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は11月8日の投資家向け説明会で「数週間以内に3社で発表する」と述べていたが、交渉は長期化の様相を呈している。 日産とルノーはロイターの取材に対し、コメントを控えた。経済産業省からはコメントを得られていない。
ロイターは11月29日、ルノーと日産、両社と連合を組む三菱自動車3社の首脳が12月5日に仏パリで会合を開き、その2日後の7日に英ロンドンで合意内容を発表する予定と報じた。時間がさらに必要な場合、その翌週に発表するとも伝えていた。
ルノーは日産への出資比率を引き下げる代わりに、EV新会社への参画と出資を日産と三菱自に求めている。ただ、日産とルノーは20年以上にわたり提携関係にあり、共有している特許が多くあるため、知的財産が複雑になっている。
ルノーが打ち出した新たな成長戦略では、さまざまなパートナーとの協力が計画されており、日産の知財を巡る懸念は強まっている。EV新会社には米半導体大手クアルコムが出資し、次世代車の基盤ソフトなどの開発では米グーグルと協業する。内燃機関車部門では中国・浙江吉利控股集団(吉利集団)の乗用車大手、吉利汽車と連携する。次世代バッテリーの開発では欧州航空機メーカーのエアバスと提携した。
ルノーは日産に43.4%、日産はルノーに15%を出資しているが、フランスの法律上、40%以上の出資を受ける子会社の日産は親会社であるルノーの株式を保有していても議決権がない。このため、関係者によれば、両社の比率を15%でそろえる案を軸に交渉を進めている。