藤岡徹
- 総裁は20日、ダボスでのパネル討論会で発言
- 12月の全国コアCPIは前年比4.0%上昇も、来月から低下と黒田氏
日本銀行の黒田東彦総裁は、日本のインフレ率が1981年以来の高水準となったことが、持続的なインフレを実現するために金融緩和を続ける自身の決意を揺るがしてはいないと示唆した。
総裁は20日にダボスでのパネル討論会で、「賃金が上昇し始め、それによって2%のインフレ目標が安定した持続的な形で達成できるようになることをわれわれは望んでいる」と発言。その上で、「もうしばらく待たなければならない」と語った。
同日発表された昨年12月の全国消費者物価指数(生鮮食料品を除くコアCPI)は前年同月比4.0%上昇し、41年ぶりの高水準に達した。ダボスでのパネルは同データ発表後最初の黒田氏の発言機会だった。
消費者物価が41年ぶり4%台、食料や電気・ガス代押し上げ-12月
日銀は今週、政策修正への強い市場観測を退け現状を維持した。総裁のこの日の発言は政策決定後のメッセージを補強した格好だ。ただ、黒田総裁が4月8日に任期を満了した後の方向転換を投資家が見込む中、市場からの圧力は続く公算が大きい。
政府・日銀の共同声明から10年、浮上する新総裁体制下の見直し論 (2)
黒田氏は日本の現在のインフレは主として輸入物価上昇によるものだと指摘。インフレ率は来月から低下し始めるとの見通しも示した。
円はこの日、対ドルで一時1%余り下落し130円台を付けた。日銀の近い将来の政策転換を見込んだポジションの解消が続いている。今週の円の下落率は約2%となった。
ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストはリポートで、日銀は近いうちに、金融緩和を維持したい意向とイールドカーブコントロール(YCC)政策の持続可能性の間で、よりうまくバランスを取らなければならなくなるだろうと指摘した。
円は昨年10月にドルに対し約30年ぶり安値を付けたが、日銀がYCCを撤回するとの観測などで急反発していた。
原題:Kuroda Signals No Shift After Inflation Hits 41-Year High (1)、
Kuroda Signals No Policy Shift After Inflation Hits 41-Year High(抜粋)