Steve Matthews、Michael MacKenzie
- 2%の物価目標実現のメッセージ、市場が受け取っていないと懸念
- 金融状況は昨年2月以来最も緩和的-タカ派姿勢あらためて強調へ
米金融当局は今週の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利上げペースの一段の減速に踏み切る方針の一方で、当局として引き締めキャンペーンを終了する用意があるとの誤った印象を与えるのは避けたい意向と考えられる。
このため米金融政策の方向性を巡り、物価抑制を目指すパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長ら当局者の意図と、ウォール街の思惑との相違があらためて浮き彫りとなりそうだ。
米金融当局による昨年の大幅な利上げにもかかわらず、金融状況は昨年2月以来最も緩和的となっている。このところのインフレ鈍化傾向を受け、金融当局が近いうちに利上げを終了し、年内に利下げに転じるとの投資家の臆測がある。
パウエル議長の観点からは、そうした臆測は甘い考えと見なされる公算が大きく、株価や債券相場の上昇はまさに物価圧力を高めることになりかねないため、議長としてはこれを押し返そうとする明確なインセンティブが働くことになりそうだ。
1月31日-2月1日のFOMC会合では利上げ幅を0.25ポイントに圧縮する決定を下すと広く予想されているが、パウエル議長はインフレ率を2%の当局目標に押し下げる取り組みを減じるものではないとの強いメッセージを発し、バランスを図るものと見込まれる。必要であれば、楽観的となっている金融市場に冷水を浴びせることも辞さない可能性がある。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のグローバル経済調査責任者、イーサン・ハリス氏は議長について、「彼はまさにタカ派的メッセージを発する可能性がある。今週の会合を受けて相場が上昇する事態を望んでおらず、楽観的な臆測に対し火に油を注ぐようなことはしたくないだろう」と語った。
パウエル議長はこれまでも自分の発言を市場に額面通り受け止めてもらえないことが時々あった。昨年の7月のFOMC会合後の記者会見の場合、利上げ継続の必要性を強調したものの、投資家の間では政策転換の観測が広がった。議長はその後、8月のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)で同じメッセージをあらためて強調した経緯がある。
12月13、14両日のFOMC議事要旨では、「正当な根拠のない」金融状況の緩和は物価安定を回復する取り組みを複雑化させるとの懸念も示されていた。
ダラス連銀のローガン総裁は今月18日の講演で、利上げペースの一層の減速を受けて金融状況が一段と緩和気味となれば、「以前の予想よりも高い水準に金利を徐々に引き上げて、そうした効果を相殺することができる」と警告した。
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)のUSマクロ責任者、ソニア・メスキン氏は「当局はこれまで目にしたよりも大幅な金融状況引き締まりを必要としている」と分析。「2022年を通じてこの特定の問題との悪戦苦闘は続き、23年も持ち越されている様子で、当局は懸念を抱いている」とコメントした。
金融状況の引き締まりが景気減速につながる経路は幾つかあり、引き締まりが十分に進めばリセッション(景気後退)を引き起こすことにもなる。住宅ローン金利の上昇は住宅市場を冷え込ませ、融資金利が上昇すれば企業投資のコストは一層割高となる。
また、ドル高となれば米国からの輸出が割高となる一方で外国からの輸入が割安となって米製造業に打撃が及ぶ。さらに株価や債券相場が下落すれば資産効果を通じて個人消費が抑制されることになる。
ただ、ローガン総裁の発言を除けば、ことさらに金融状況についてコメントした当局者はこれまでのところいない。
Tロウ・プライスの債券ポートフォリオマネジャー、スティーブ・バルトリーニ氏は「金融状況の緩和に協調して抵抗しようとする取り組みはない」とした上で、パウエル議長がそれを押し返そうとしなければ驚きであり、年後半の利下げを市場が織り込むことに対してはそうした動きがありそうだと話した。
原題:Fed’s Wall Street Clash Sets Stage for Powell’s Hawkish Message(抜粋)