和歌山県串本町沖などに生息する「ホンソメワケベラ」が、自らの写真を見て自分だと認識できることを、大阪公立大の幸田正典特任教授らの研究グループが発見した。研究結果は7日、米科学誌オンライン版に掲載された。
チンパンジーやゾウ、イルカなどは、鏡に映った姿を見て自分自身と認識することができる。これまで研究グループは、ホンソメワケベラも同様に鏡に映る自分を認識できることを解明していた。
今回の研究では、ホンソメワケベラが鏡に映った自分自身を認識したことを確認した上で、当該個体の写真の喉の部分に、寄生虫に似たマークを書き加えたものを見せた。すると、写真を見た8個体のうち6個体が、マークがついていた部分を砂などにこすりつけ、寄生虫をとろうとする行動をみせたという。マークのない自分の写真やマークのある別個体の写真を見せても、同様の行動はとらなかった。
さらに、どこを見て自分と判断しているかを解明するため、全身が自分▽顔のみ自分で体は別個体▽顔は別個体で体のみ自分▽全身が別個体-の4種類の写真を見せた。すると、顔や全身が別個体だった場合は攻撃したが、顔が自分の場合は体が別個体でもほとんど攻撃しなかった。この実験から、ホンソメワケベラは顔を見て自己認識していることが明らかになったという。
幸田氏は「今回の研究は、人間だけでなく、魚にも高度な自己認識があることを示唆しており、これまでの常識を根底からくつがえす可能性がある」と話した。