政府・与党連絡会議で謝罪する岸田首相(6日、首相官邸で)=源幸正倫撮影

 性的少数者(LGBT)を差別する発言をした首相秘書官が更迭された問題で、岸田首相は6日、謝罪に追い込まれた。首相官邸内で問題が続き、与党からも政権の緩みを指摘する声が上がっているためだ。批判の 払拭ふっしょく を狙い、自民党はLGBTへの理解増進法案の提出に向けた議論を再開させることを決めた。

LGBT法案議論再開へ

政府・与党連絡会議で謝罪する岸田首相(6日、首相官邸で)=源幸正倫撮影

 6日昼、官邸で開かれた政府・与党連絡会議。首相が冒頭で、荒井 勝喜まさよし ・前首相秘書官の発言を謝罪すると、与党幹部から注文が相次いだ。

 公明党の山口代表は「当事者の声をよく聞きながら、LGBTなどへの理解が広がるよう取り組んでほしい」と求め、自民党の茂木幹事長は「多様性を尊重する包摂的な社会を作ることが非常に重要だ。政府の中でしっかり確認してほしい」とクギを刺した。

 これを受け、松野官房長官は夕方の記者会見で、同性婚制度に関し、当事者から話を聞く場を設ける考えを明らかにした。茂木氏も萩生田政調会長に、LGBTへの理解増進法案の党内議論を再開するよう指示。記者会見で「提出に向けた準備を進めたい」と表明した。法案は超党派でまとめたが、自民の保守系議員が反対し、2021年に国会提出を見送った経緯がある。

 政府・与党が火消しに懸命なのは、岸田内閣の支持率が低迷する中で、さらなる痛手になるとみているためだ。官邸内では最近、首相の長男の政務担当秘書官が外遊時に公用車で観光したなどと報じられたほか、松野氏の義弟が酒気帯び運転の疑いで摘発され、松野氏の政策秘書を辞めたばかりだ。

官邸内で続く問題に、自民の梶山弘志幹事長代行は記者会見で「予算審議の最中ということも十分に理解し、襟を正さなければならない」と苦言を呈した。

 首相秘書官は国会答弁の作成など政策決定に関与しているため、首相が掲げる政策への信頼を損ないかねないとの危惧も出ている。小泉進次郎・元環境相は、首相が打ち出した「異次元の少子化対策」に触れ、「多様な価値観・生き方を否定する発想では『異次元』の政策にはならない。選択的夫婦別姓導入に踏み込むくらいの政策転換が必要だ」と指摘した。

 4月には衆院補欠選挙や統一地方選が控える中、与党の危機感は強い。自民の森山裕選挙対策委員長は6日、訪問先の大津市内で「選挙に影響があると思う。首相や自民党の考えではないと説明し、理解をいただく努力を続ける」と強調した。