インタビューに答えるアジア・オリンピック評議会(OCA)の小谷実可子アスリート委員長=6日、東京都中央区
インタビューに答えるアジア・オリンピック評議会(OCA)の小谷実可子アスリート委員長=6日、東京都中央区

     国際オリンピック委員会(IOC)は1月下旬、ウクライナに侵攻しているロシアと同盟国ベラルーシの選手の国際大会参加を「中立」などの条件付きで検討する方針に転換した。欧米で反対の声も挙がる中、来年のパリ五輪を念頭に、アジア・オリンピック評議会(OCA)は両国の選手がアジアでの競技会に参加する機会を与える考えを示した。水泳のアーティスティックスイミング(AS)出身でOCAアスリート委員長を務める小谷実可子さん(56)に、背景とIOCが抱えるジレンマについて聞いた。

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     OCAの意向は、ロシアとベラルーシの除外勧告を出してから1年足らずで態度を変えたIOCを後押しするもの。小谷さんはOCA会長代行がほぼ独断で進めた経緯に驚きつつ、「アジアらしいと言えばアジアらしいが、(アスリート委にも)特に反対意見は今のところ入ってきていない」と話す。

     欧州連合はロシア人のビザ(査証)取得を厳格化したが、アジアは制限を課しておらず、現時点でパリ五輪ボイコットをちらつかせる国もない。「だからと言ってアジアは歓迎してくれるんだと思わないでほしい」

     IOCの声明は国連人権理事会による「懸念」を受けて出されたが、「(国連に)言わせたのかな。自ら突破口を開いて(両国を)受け入れる検討を始めようとしたのではない。ちょっとずるいようにも賢いようにも見える」という。今後の「ロシア対応」は組織的なドーピング問題に揺れた時と同じく、まず各国際競技団体(IF)などに委ねるとみられる。「競技の状況や、ロシアとベラルーシの選手が及ぼす影響を分かっているIFが決断すべきだ」と理解を示しつつ、「(IOCは)うまいなとは思う」。

     小谷さんは内戦状態が続くイエメンなど戦争を抱える国からも五輪選手団が派遣されてきた事例に触れ、「アスリートは国を代表しているのであって、政府の代表ではない」と指摘。パリ五輪を来年に控える中、IOCの思惑を「どこかの選手が犠牲になることは避けたいので、国旗もその色も一切出さずに出場というのが一番無難」と推し量る。

     条件付き復帰が決まったとしても課題は山積だ。「ロシア国籍の選手が金メダルを取ったら国が元気になるし、プーチン(大統領)に祝福されている映像が出る。出場した後の影響にも拘束力の強化が必要」と話し、中立の骨抜きを避ける手だてまでをIOCに求めた。

     「ASの場合、ロシアとウクライナはすごく大きな存在。表彰台で隣に立つかもしれない。ハグまではできないだろうが、全選手が正々堂々と戦って、全員に拍手を送れる大会になってほしい。理想論です」。当事者の感情を思えば、簡単に答えが出る問題ではない。