[東京 24日 ロイター] – 日銀副総裁候補の内田真一日銀理事は24日午後、衆院議院運営委員会での所信聴取で、過去10年間の黒田緩和を評価した上で、今後も工夫を凝らして緩和を継続すると強調した。自身が導入に関わったマイナス金利政策の撤廃はまだ先になるとの見通しを示した。

<「副作用があるから緩和を見直すのではない」>

内田氏はウクライナ情勢や新型コロナウイルス感染症の影響など「内外の経済は不確実性が高い」として「金融緩和を継続し、日本経済をしっかり支える必要がある」と語った。

自身が政策運営に携わった過去10年間の黒田東彦総裁の下での大規模な金融緩和について「大きな効果があり、デフレでない状況を作った」と指摘。低金利で「金融機関の収益などに悪影響が生じているが、副作用を効果が上回っていると判断している」とした。

内田氏は「副作用があるから緩和を見直すのでなく、工夫をこらして緩和を継続する」と述べ、「これからも経済物価や市場の変化に適応し、しっかり緩和を続けられるようアイデアを出す」とした。「実務面からも市場の安定に責任を持って取り組む」とも述べた。

現行の金融緩和の主要な副作用は金融機関の収益への影響と市場機能と指摘。「強い政策なので市場機能に影響がないことはないが、バランスが重要」とし、「副作用に配慮していく」と強調した。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の見直しに関しては「現状においてはYCCを中心に緩和策を考えたい」と述べた。同時に5年の任期中には「さまざまな緩和策を検討したい」とも発言した。

内田氏は「マイナス金利を含め今の金融緩和は適切」と指摘。経済・物価情勢を踏まえ、2%目標の持続的・安定的な達成が見通せるようになっているかが重要で、マイナス金利の撤廃は「なかなかすぐにというわけにはいかない」と述べた。

緩和からの出口については「具体的議論は時期尚早」としつつ、政策立案者として「出口については当然のことながら当初から考えている」とも述べ、「適切に対応することができる」と述べた。

24日に公表された1月の全国消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比プラス4.2%と、1981年9月以来の伸び率となった。内田氏は「物価目標を大きく上回っており家計に大きな負担になっている」との認識を示した。食料・エネルギーの上昇幅が大きいことから「低所得家計がより大きく影響を受けている」と指摘した。

企業や家計の物価観を示す予想物価上昇率は「全体としてみると上昇しているのがわれわれの判断」だが「2%には距離がある」と述べた。

<コミュニケーション強化目指す>

日銀の政策に対する理解を浸透させるため、「広く国民に日銀に関心を持ってもらうのが重要」と強調し、全国の本支店を通じてコミュニケーションを重視する姿勢を示した。国民には、日銀がいま金利を上げるべき状況にはないことを説明し、理解していただく必要があると述べた。

内田氏は金融政策決定会合を巡り「決定会合の終了時間を気にしないで議論したい」と述べた。金融市場では、通常正午前後の決定会合の終了時間が遅くなってくると「金融政策の変更を議論しているのではないか」との思惑が生じ、為替などが乱高下する場面がある。

(和田崇彦、竹本能文)