[東京 28日 ロイター] – 海洋土木の東洋建設が、任天堂創業家の資産運用会社による同社株取得を巡り、外国投資家の対内直接投資を管理した外為法違反などの疑いがあるとして関係省庁に調査を求める書簡を送ったことが分かった。ロイターが書簡を確認した。
書簡は3月下旬に関係省庁に送付した。任天堂の故山内溥元社長から受け継いだ資産を投資・運用するヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)と関連会社が昨春、東洋建設株を27.19%まで買い進めたことについて、うち計約25%を保有するケイマン諸島の3法人は外国投資家に相当すると指摘。その上で、YFOが外国籍の関連会社3社を通じて株式を分散して取得し、必要な届出を怠ったことは外為法違反の可能性があると主張した。
具体的には、3法人の出資比率はそれぞれ10%未満だが、議決権その他の権利を行使していることを合意している場合、外為法上の「密接関係者」に該当することになり、合計10%以上となった時点で事前届出が必要だったとしている。
また、それぞれの法人は一定の基準を満たせば10%未満の取得について事前届出が免除される制度を使ったが、YFO側が今年の定時株主総会で新たな取締役候補者選任の提案するとしており、こうした提案の可能性を認識しつつ株式取得をしたのであれば免除の対象とはならず、事前届け出が必要だったと指摘した。
日本政府は安全保障上重要な国内企業に対する外国からの投資規制を強化するため、2020年に改正外為法を施行。東洋建設は、国防上重要な離島の港湾施設の建設などを手掛けており、コア業種に指定されている。
このほか東洋建設は、YFOが「純投資」としたまま株を買い進め、途中で買収目的に切り替えたことなどを踏まえ、金融商品取引法の大量保有報告規制、インサンダー取引規制などへの違反の可能性もあると指摘し、関係省庁に調査を依頼した。
ロイターが書簡の内容についてコメントを求めたところ、YFOは「このような事実無根の圧力に屈することはない」と反論。「東洋建設の株式取得及び買収提案を行うに際して、当局とも逐一相談しながら進めており、この間、当局から指摘なども受けていない」とし「買収提案の実現を諦めることはない」との考えを改めて示した。
外為法違反の指摘については、3法人は「別個に意思決定がなされており、議決権その他の権利の行使等の合意は存在しない」と主張。事前に当局に相談した上で、事前届出免除制度を利用して東洋建設株式を取得した後、事前届出免除利用時における事後報告書を提出し、受理されていると説明した。
また、取締役候補者を提案することを公表したのは2023年1月であり、株式を買い付けている時には全く想定していなかったとした。
改正外為法は、対内直接投資の事前届出を行わなかった場合、懲役や罰金の他、対内直接投資などにより取得した株式の全部または一部の処分、その他必要な措置を命ずることができる。
(山崎牧子、清水律子、勝村麻利子 編集:久保信博)