• 原油高で金融政策の難易度一段と増す、原油100ドルが視野に
  • 米製造業活動低下、不動産ファンドが金融安定のリスク、テスラ株下落
A nozzle pumps gasoline into a vehicle at a gas station in Los Angeles, California. Photographer: FREDERIC J. BROWN/AFP

インフレ抑制に取り組む金融当局にとって難題がまた飛び込んできました。石油輸出機構(OPEC)と非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」が決めたサプライズ減産。原油価格が再び上昇へ転じており、銀行不安などで既に高まっているリセッション(景気後退)リスクとインフレ再加速懸念との間で金融当局は難しいかじ取りを迫られることになりそうです。セントルイス連銀のブラード総裁は、原油高によって「われわれの仕事がもう少し難しくなる可能性はある」との認識を示しました。以下は一日を始めるにあたって押さえておきたい5本のニュース。

複雑化するパズル

OPECプラスによる減産決定は、ここ数週間、金融の混乱が今後の見通しにどう影響するかに頭を悩ませてきた各国・地域の中央銀行当局者に対し、原油価格の上昇という新たな問題を突きつけた。ステート・ストリートのストラテジスト、マリヤ・ベイトメーン氏は、「インフレが正常化している幾つかの兆候が見え始めていたが、ここに来て新たな問題が再び浮上した」と指摘。「中央銀行にとって難易度が一段と増している」との見方を示した。

100ドル再び視野に

OPECプラスによる協調減産決定で原油相場の見通しは修正を余儀なくされ、1バレル=100ドルが再び視野に入ってきた。減産発表に先立ち、OPECは今年下期には生産を減らすのではなく、増やす必要があることを示唆していた。国際エネルギー機関(IEA)は需要が今年これから急増すると見込んでおり、市場の不意を突いた減産で世界経済に新たなインフレリスクが持ち上がっている。米ラピダン・エナジー・グループのボブ・マクナリー氏は、「もし彼らが強気のシナリオに切り込むなら、バレル100ドルをあっという間に通過するだろう」と語った。

約3年ぶり低水準

3月の米供給管理協会(ISM)製造業総合景況指数は46.3と、市場予想を超える悪化で2020年5月以来の低水準となった。新規受注と雇用の指数低下が特に目立った。金利上昇とリセッション懸念の強まり、貸し出し状況の引き締まりが企業の設備投資に重しとなり始めている可能性を示唆している。ISM製造業調査委員会のティモシー・フィオレ会長は、「新規受注のペースは引き続き低調だ。製造業の成長がいつ再開するのかを巡り懸念が強まっている」と指摘した。

商業用不動産ファンド

商業用不動産に投資するファンドの純資産価値が過去10年に3倍以上に増え、金融安定への脅威になっていると欧州中央銀行(ECB)が警告した。ECBは報告書で、投資家は資金を引き揚げる機会が頻繁にあるのに対し、ファンドの保有資産はかなり流動性が低いというミスマッチを指摘。これは金融システムを最近揺るがせたような取り付けにファンドが見舞われるリスクを高めていると論じた。不動産ファンドの不安定は商業用不動産市場に「システミックな影響を及ぼす恐れ」があり、金融システム全体の安定と実体経済にも波及し得るとの見解を示した。

テスラ株下落

3日の米株式市場で米電気自動車(EV)メーカーのテスラが大幅下落。同社は複数モデルを値下げしたにもかかわらず、1-3月(第1四半期)の納車台数はわずかな伸びにとどまった。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が今年初めに描いたような需要拡大が続くのか疑問視されている。ジェフリーズのアナリスト、フィリップ・ウショワ氏はリポートで、「生産が納入を上回る状態が続くと、価格の弾力性と一般的な需要の弱さについて議論が続くことになる」と指摘した。

その他の注目ニュース

ブラックストーンの不動産投資信託、3月は解約請求が45億ドルに増加

OPECプラスの不意打ち減産、市場を「遊び場」とする投機筋が標的

格闘技界に新風か、UFCのエンデバーがWWEを93億ドルで買収へ