[香港/上海 4日 ロイター] – 中国の電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディングが事業再編計画を発表したのを契機に、外国人投資家が中国への投資を着々と進めている。中国の指導部が企業寄りの姿勢に転換しつつあることを示す最新の兆候と受け止められたからだ。取引所のデータによると、アリババによる先週の発表以降、外国勢は中国本土上場株を全営業日で買い越しており、第1・四半期の資金流入は過去最高を記録した。
投資家はアリババに対しても強気姿勢に転じており、同社株は2021年と22年は大きく下落したが、今年は上昇している。
こうした資金の流れは、外国人投資家の心理が転換したことを示しているのかもしれない。中国政府が昨年12月にゼロコロナ政策を解除して経済活動が再開した際にも、外国人投資家は様子見姿勢を保っていた。
3月はMSCI世界株指数が2.8%の上昇にとどまったのに対し、MSCI中国株指数は4.5%上昇。上海総合指数は第1・四半期に5.9%上昇し、四半期としは過去2年余りで最高の上昇率となった。
米資産運用会社オールスプリング・グローバル・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、デリック・アーウィン氏はアリババの事業分割と創業者、馬雲(ジャック・マー)氏の中国への帰国について、企業家に歩み寄る中国政府の取り組みの一端のようだと指摘。「民間部門への投資を再び誘発するかもしれない」と述べた。
中国政府は20年終盤以降、幅広い業種を厳しく取り締まり、新興企業も大企業も一様に不透明な環境での経営を強いられた。政府はハイテク企業を独占的な慣行などで処罰し、アリババを含む電子商取引企業に巨額の罰金を科した。
英資産運用会社オーブリー・キャピタル・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ロブ・ブリューイス氏は、同社が今年、中国株への投資を再開したと明かした。中国の景気回復への期待と割安な中国株のバリュエーションが根拠だという。
ブリューイス氏によると、オーブリーは過去2年間保有していなかったアリババ株を今年購入した。アリババの最近の事業計画は好材料であり、相応の投資を維持する方針だという。
アリババ株は事業計画を発表して以降の5営業日で14%余り上昇。中国市場には差し引きで約117億元(17億ドル)の資金が外国から流入した。
この5営業日の純流入額は2月全体の92億元を上回り、3月の純流入額は354億元に、第1・四半期の純流入額は過去最高の1860億元に達した。
<百花斉放百家争鳴>
アリババと創業者の馬雲氏は中国政府による取り締まりで格好の標的となっていただけに、新たな事業計画は政策転換の兆候だとみられている。同社にとっては成長と資本調達の局面が再び訪れる予兆だと投資家は考えている。
アリババ傘下の金融企業アント・フィナンシャルは2020年11月に予定していた新規株式公開(IPO)が直前になって中止された。これを契機に予測不可能な規制と取り締まりの時代が幕を開け、アリババ株は昨年10月までの2年間で約80%下落した。
米資産運用会社Tロウ・プライスのポートフォリオマネジャー、アーネスト・ユング氏は、民間企業とインターネット部門が「徐々に安定化していく」と予想。同氏のチームは注目されていない銘柄や不人気銘柄に重点を絞っており、昨年アリババ株に投資した。
疑問として残るのは、中国が企業寄りの姿勢と政治的なイデオロギーをどのように調和させるかだ。
オールスプリングのシニア投資ストラテジスト、ブライアン・ジェイコブセン氏は、これが「(自由な言論活動を提唱した)毛沢東の『百花斉放・百家争鳴』運動のように、党利に沿わなければすぐに転換されることがないか」注視していくだろう、と話した。
(Xie Yu記者、Jason Xue記者)