• JPモルガンがファースト・リパブリック買収、米預金保険の改革案
  • 6月1日にも債務上限の危機、米製造業の縮小、スタグフレーション
A statue of Alexander Hamilton, the first U.S. Treasury secretary, stands at the U.S. Treasury in Washington, D.C., U.S., on Monday, Oct. 21, 2013. Photographer: Andrew Harrer/

JPモルガン・チェースの歴史は米国の独立宣言から約20年後、日本の寛政11年にあたる1799年までさかのぼります。数々の買収や統合、社名変更を綴った長い社史によれば、ハミルトン初代財務長官が1804年の決闘で使用した銃を同行は1930年に購入。2018年にスミソニアン博物館で公開され、ミュージカル「ハミルトン」の人気も手伝って話題になりました。この銃の歴史的な価値は計り知れませんが、ファースト・リパブリック・バンクの買収は後世にどう評価されるでしょうか。以下は一日を始めるにあたって押さえておきたい5本のニュース。

決着

JPモルガン・チェースは公的管理下に置かれた米地銀ファースト・リパブリックを買収する。米連邦預金保険公社(FDIC)が実施した緊急入札で落札した。民間セクターが一時救済を図ったが、ファースト・リパブリックのバランスシートの穴を埋めることができず、顧客の預金引き揚げが続いていた。JPモルガンは買収代金としてFDICに106億ドル(約1兆4500億円)を支払う。また、FDICは新たに500億ドルの5年物固定金利ターム融資を提供する。JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は「米銀行システムは極めて健全だ」としながらも、銀行融資はしばらく今回の一連の破綻による影響を受けるだろうと述べた。

3つの選択肢

米連邦預金保険公社(FDIC)は最近の相次ぐ銀行破綻を受け、預金保険の抜本的見直しを望んでいる。現在は大半の口座で25万ドル(約3400万円)までカバーされる預金保険について、FDICは3つの選択肢を提示。企業が保有する口座のカバー上限を現在よりも引き上げる「的を絞った」手法に切り替える、保険対象を現状のまま維持する、そして全ての預金を対象にするよう変更することを挙げた。こうした変更には議会での措置が必要になる。

6月1日

イエレン米財務長官は連邦債務を上限未満に維持するための特別会計措置について、早ければ6月初旬に使い切る可能性があると米議員らに伝えた。マッカーシー下院議長ら与野党議会指導部に宛てた書簡で、「われわれの最善の予測では、6月初旬までには政府の支払い義務全てを履行し続けることができなくなる。早ければ6月1日の可能性もある」と説明した。

縮小続く

米供給管理協会(ISM)が発表した4月の製造業総合景況指数は47.1と、前月から上昇したものの、6カ月連続で活動縮小を示した。6カ月連続は2009年以来の長さで、製造業の低迷が長引いていることが示唆された。仕入れ価格指数は53.2と、昨年7月以来の水準に上昇。4月上旬には原油価格が上昇していた。ISM製造業調査委員会のティモシー・フィオレ会長は「新規受注のペースは依然低調だ。製造業がいつ成長を再開するのか懸念が続いている」と指摘した。

危険シナリオ

スタグフレーションのシナリオが投資家に見落とされている可能性がある。経済成長減速と根強いインフレの組み合わせは市場のミスプライシングを露呈し、今年に入ってからの株式、クレジット、その他のリスク資産の回復は足をすくわれる可能性がある。2022年の傷がまだ十分に癒えていないファンドマネジャーにとっては不穏なマクロ経済的環境の到来を意味する。シュローダーの運用者、ケリー・ウッド氏は「今年は何かが壊れて米金融当局が利下げを余儀なくされるまで、インフレ持続と緩やかな成長というスタグフレーションのような状態になるはずだ」と指摘。「債券からキャリーを得るには良好な環境だ」と語った。

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