[ワシントン 3日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は5月2─3日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ5.00─5.25%とした。決定は全会一致。また、利上げ停止の可能性を示唆した。

利上げは2022年3月以降で10回連続。ただ、声明からは「徐々にインフレ率を2%に戻すのに十分な制限的な金融政策姿勢を達成するために、幾分の追加的な金融政策引き締めが適切になるかもしれないと予想する」との文言が削除された。

代わりに2006年の利上げ停止時に使われた文言を彷彿とさせるより適した表現を使用。「追加的な金融政策の引き締めがどの程度適切かを決めるに当たり」当局は今後数週間から数カ月間の経済、インフレ、金融市場の動向を注視するとした。

もっとも新たな文言は6月の次回FOMCでの金利据え置きを保証するものではなく、声明では「インフレ率は引き続き高止まりしている」や「雇用の伸びはここ数カ月間堅調」と指摘した。

パウエル議長はFOMC後の記者会見で、FRBは依然としてインフレ率が高すぎると見ていると指摘。物価圧力の高さはなおFRBの懸念事項だと強調し、利上げサイクルの終了について言及するのは時期尚早だと述べた。

また必要なら追加利上げの用意があるとし、今回の会合では6月の利上げ停止について何も決定しておらず、次回の政策金利に関する判断は「会合ごと」に決定されるとした。

一方で、パウエル議長は金融政策について休息が必要な時期が近いとしたほか、「政策は引き締まっている」とし、FRBが政策金利を十分に引き上げた可能性があるとした。

その上で、年内に利下げが行われる可能性はかなり低いと強調。「インフレ率はそれほど迅速に低下せず、しばらく時間がかかる」とし、「この予想がおおむね正しければ年内の利下げは適切ではない」とした。

米経済についてはなお「ソフトランディング(軟着陸)」に期待していると表明。賃金の伸びがより持続可能な水準まで緩やかになっていることもあり、米国はリセッション(景気後退)に陥るよりもリセッションを回避する可能性が高いとした一方、リセッションを排除するつもりはないとし、「緩やかなリセッションの可能性はある」とした。

声明では、経済成長はなお緩やかだが「家計や企業の信用状況の引き締まりが経済活動、雇用、インフレの重しになる可能性がある」とした。

CFRAリサーチのサム・ストーバル最高投資ストラテジストは、前回の声明では「追加的な金融政策引き締めが適切になるかもしれないと予想する」としていたが、今回は「追加的な金融政策の引き締めがどの程度適切かを決める」に変更されたことが重要と指摘。「『予想する(anticipating)』の代わりに『決める(determining)』という言葉を使ったことでFRBが現時点で利上げ停止状態にあることを実質的に市場に伝えている」と述べた。

このほか、パウエル議長は米債務上限問題について、引き上げに失敗した場合にはFRBがその影響から米経済を守れる可能性は低く、米政府は全ての支払いができない状態になるべきではないと強調。債務上限問題の解決は議会およびバイデン政権の問題だとした。

米債務不履行(デフォルト)は前例がなく、米経済に極めて大きな不確実性と多様な結果をもたらすと警告した。

また、銀行最大手が大規模な買収を行わないことがおそらく良策としながらも、JPモルガン・チェースによる米中堅銀行ファースト・リパブリック銀行の買収は例外だったと述べた。

ファースト・リパブリック銀の破綻処理は、銀行システムに深刻なストレスがかかっていた時期に「一線を引くための重要な措置」だったと指摘。信用の供与状況を緊密に注視しており、銀行セクターの動向を幅広く監視していくと語った。

また、シリコンバレーバンク(SVB)の取り付け問題のスピードは、監督と規制に反映させる必要があるとの認識を示した。