[東京 11日 ロイター] – ソフトバンクグループ(SBG)の後藤芳光・最高財務責任者(CFO)は、傘下のビジョン・ファンドの投資に関して「『守り』と『攻め』両面に対応できる運用をしていく」と述べ、従来の守り一辺倒から見直す方針を示した。

後藤CFOは11日の決算会見で、米中の貿易摩擦やウクライナ侵攻など地政学リスクは解決していないとし、慎重な運用姿勢を維持する必要性を説明。その上で「チャットGPT」など生成AIの登場により「技術の進化への投資機会を逃さないことが大事」と指摘し、AI関連企業への投資の再開を探っていく方向性を語った。

同時に「攻撃開始でどんどん攻めるのではなく、しっかりといいものを見極めていく1年になる」とも話した。

今後はビジョン・ファンドと傘下の英半導体設計会社アームが事業成長の軸になるとした。アームの売上高は、直近3年間の平均成長率が16%に上るなど、「想定を上回った」と強調した。同社は先月、米国での上場を非公開で規制当局に申請。年内にもナスダック市場への上場を目指している。

この日発表した2023年3月期連結決算(国際会計基準)は、投資損失が響き最終損益が9701億円の赤字となった。前期の1兆7080億円に続く2期連続の最終損失。ビジョン・ファンドの投資損失が5兆2794億円まで膨らんだことが響いた。

中国の電子商取引(EC)を手掛けるアリババ集団株式を利用したデリバティブ契約で早期に現物決算した関連で4.6兆円の利益を計上したが、ビジョン・ファンドの落ち込みを補えなかった。有利子負債は、前期末から2兆2338億円減少した。

ただ、四半期ごとの赤字幅は縮小している。1―3月期の連結最終損益は576億円の赤字で、22年10―12月期の7834億円の損失から改善した。ビジョン・ファンドの投資損失も2367億円で5四半期連続の赤字となったが、前期の7303億円からは赤字幅が縮小している。

24年3月期通期の見通しは開示していない。

後藤CFOは、経営破綻した英金融会社グリーンシル・キャピタルのファンドに関連する未回収資金を巡るクレディ・スイスによる損害賠償請求についても触れ、「われわれが負ける要素は見当たらない」と発言した。

(浦中美穂 編集:田中志保、橋本浩)