• 燃料価格の下落や経営効率化踏まえ、値上げ率を圧縮-西村経産相
  • 標準的な家庭の値上げ率は東電HDが14%、東北電24%、中国電29%

政府は電力大手7社の家庭向け電気料金の値上げを認可する方針を明らかにした。燃料価格の下落や経営効率化などを踏まえて値上げ率は申請時より圧縮され、14-42%となる見通しだ。

  西村康稔経済産業相は16日の会見で、同日開催した物価問題に関する閣僚会議で電力7社の料金値上げに対する査定方針が了承されたと発表した。今後各社に査定結果に基づく補正を指示し、必要な手続きを経て速やかに認可を行うと語った。

  西村氏によると標準的な家庭における電気料金の値上げ率は、北海道電力が21%、東北電力が24%、東京電力ホールディングス(HD)が14%、北陸電力が42%、中国電力が29%、四国電力が25%、沖縄電力が38%。

  西村氏は値上げの開始時期については言及しなかった。東北電、北陸電、中国電、四国電、沖縄電は4月から、東電HDと北海道電は6月からの引き上げを求めていた。

事故で停止中の福島第一原発。原発の稼働停止も電力価格高騰の要因の一つだ(福島県富岡町、2021年3月7日)Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  値上げ認可方針の発表を受けて電力各社の株価は上昇した。沖縄電の株価は一時前日比5.6%高の1222円と2020年3月27日以来の日中上昇率を付けた。そのほか、北陸電が同5.8%高、東北電が同4%高、東電HDが同3.9%高となっている。 

 ロシア・ウクライナ戦争などを背景に物価上昇が続いており、電力価格のさらなる上昇は家計にとって打撃となる。その一方で、燃料費上昇分を転嫁しきれていないことなどから電力大手は10社中9社が前期(2023年3月期)営業赤字となっており、値上げが認可されれば業績悪化には歯止めがかかるとみられる。

  大和証券の末広徹チーフエコノミストは、原油価格や円安が一服するまで値上げを「遅らせたことで家計に与えるインパクトは多少は小さくなる。逆にそれが狙いで岸田政権はここまで引っ張った」との見方を示した。

  末広氏は消費者物価(CPI)の対前年比の伸びは7月ごろには鈍化してくる可能性があり、電気代上昇などにより政府がインフレを抑えきれていないといったことをメディアに書かれるリスクは大きく低下した、と指摘した。

  岸田文雄首相は2月、電気料金の抑制に向け経営効率化のほか足元の為替や燃料価格の水準も勘案して値上げの審査を行うよう西村経産相に指示。当初平均28%から46%の値上げを求めていた各社は燃料価格の下落などを織り込み、北陸電を除き値上げ幅を引き下げた

補正後の値上げ申請幅:

  • 北海道電力:25.2%(当初32.17%)
  • 東北電力:25.2%(同32.94%
  • 東京電力HD:17.6%(同29.31%
  • 北陸電力:46.9%(同45.84%
  • 中国電力:30.6%(同31.33%
  • 四国電力:27.9%(同28.08%
  • 沖縄電力:40.9%(同43.81%

  西村経産相は会見で、直近さらに下落している燃料価格や政府が1月使用分から行っている電気料金の負担軽減策を加味した試算によると、今回申請を行った7社中5社が値上げ申請前よりも低い料金水準になると述べた。

  残る2社のうち沖縄電は沖縄県が国からの支援分を含め計104億円の負担軽減のための予算を組んでおり、消費者の負担はさらに下がるという。もう1社の北陸電は13年ぶりの料金値上げの上、改定後も今回値上げしている7社の中では最も低い料金水準となると説明した。

  値上げについては消費者庁がカルテルなどが相次いで発覚した電力会社の不正が料金へ与える影響の検証やコスト効率化の徹底などについて経産省に対して求めていたが、朝日新聞によると、消費者庁は15日に値上げを容認する意向を表明した。

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