ロシアのプーチン大統領=19日、南部ピャチゴルスク(EPA時事)
ロシアのプーチン大統領=19日、南部ピャチゴルスク(EPA時事)

 ロシア外務省は21日、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)について「非西側諸国を取り込み、中ロの発展を阻止する」ことを狙ったと非難した。プーチン政権は、招待国として参加した「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の動きを注視。西側諸国によるウクライナへの戦闘機供与計画についても、影響を見極めていく構えだ。

G7、軍事・財政で支援継続 ゼレンスキー氏対面参加―広島サミット閉幕

 政権にとって西側諸国によるウクライナ支援は既定路線で、侵攻の長期化を見据えて「戦時体制」を固めている。戦況で優位に立つことが、将来の停戦交渉でカギを握るという立場は不変だ。

 政権がむしろ注視したのはグローバルサウスの動向。サミットにはロシアの友好国であるブラジルとインドも招待された。ペスコフ大統領報道官は「心配していない」と強がり、ラブロフ外相は西側諸国とグローバルサウスの間に「断層が生じている」と主張した。

 一方、ロシア国営テレビは「西側諸国は対ロ制裁の強化で合意したが、ロシアへの全面禁輸に踏み切れなかった」と報じた。政権は、G7による対ロ全面禁輸が現実となれば「(ウクライナ産)穀物輸出合意を打ち切る」(メドベージェフ前大統領)と警告。G7首脳声明に全面禁輸が盛り込まれず、ロシア経済へのさらなる打撃は回避されたことには安堵(あんど)しているようだ。

 被爆地でのサミット開催は対米批判に利用され、ザハロワ外務省情報局長は、米国が核兵器を使った広島で「ロシアの核の脅威」をテーマとするのは「皮肉極まりない」と論評。プーチン大統領の最側近パトルシェフ安全保障会議書記は「(米国は)原爆を落としたのはソ連だと日本人に吹聴している」と根拠なしに発言した。

 国営テレビは、広島でのサミット反対デモを「国民の総意」と歪曲(わいきょく)。「バイデン米大統領の訪問に日本人は激怒した」と報じ、G7の権威低下の宣伝を試みた。

 ただ、ロシアも米国の影響力を必要としているようだ。メドベージェフ氏はSNSで、ゼレンスキー政権との停戦交渉は無理だとしつつ「戦後の世界秩序は米国としか話せない」と指摘。局面打開のための対米交渉に含みを残した。