[クパチーノ(カリフォルニア州) 5日 ロイター] – 米アップルは5日、年次世界開発者会議(WWDC)で拡張現実(AR)ヘッドセット「Apple Vision Pro(アップルビジョンプロ)」を発表した。新たなカテゴリーの製品が発表されるのは腕時計型端末「アップルウオッチ」以来となる。 ビジョンプロの価格は3499ドル。米メタ・プラットフォームズの仮想現実(VR)ゴーグルの最上位機種の3倍以上の価格となる。2024年初めに米国で発売され、その後世界展開する。

ティム・クック最高経営責任者(CEO)は目、手、声でデバイスを操作する「空間コンピューティング」と説明。「この製品を見るのではなく、この製品を通して見る初のアップル製品だ」と述べた。

アップルによると、ビジョンプロは3次元カメラとマイクを搭載しており、動画や写真の撮影が可能。撮影後に3次元で見ることができるという。

また、ビジョンプロはユーザーの頭部にかかる重量を減らすために外付けバッテリーとなっており、2時間の使用が可能だが、コンセントやバッテリーにつなぐ必要があるため単独での使用はできない。

メタの製品と最も異なる点は、他の人々にユーザーの目を見せるための外付けディスプレーを備えている点。ユーザーが仮想世界に没入しているときはディスプレーは真っ暗になるが、ユーザーに人が近づくと、ヘッドセットはユーザーと外の人の両方をお互いに見せることができる。

仕事用にも、ビジョンプロをトラックパッドとキーボードと一緒に使うことで、複数のディスプレーを持つ従来のコンピューターのように使えることを示した。

また、デザインソフト大手の米アドビ、米マイクロソフトとも、それぞれのアプリをビジョンプロに搭載するために協力を行ってきたほか、米ゲーム用ソフトウエア会社ユニティ・ソフトウエアとも協業していることを明らかにした。発表を受けてユニティの株価は17%急騰した。

米メディア・娯楽大手ウォルト・ディズニーの動画配信サービス「ディズニープラス」もアップルTVプラスと同様に利用できるようになる予定。

アップル株価は発表前に2%高の184.95ドルと過去最高値を更新したが、終値は0.8%安となった。

今回のWWDCでは、オープンAIが開発した対話型人工知能(AI)「チャットGPT」やグーグルの対話型AI「Bard(バード)」のような生成AIに関する大きな発表はなかったものの、ボイスメールの文字起こしなど一部の機能にAIを組み込んだ。

<Macを刷新> アップルは自社製プロセッサー「M2」を搭載した15インチのノートパソコン「MacBook Air(マックブックエア)」も発表した。6つのスピーカーも搭載し、価格は1299ドルから。来週から発売される。

13インチのマックブックエアは値下げされ1099ドルからとなる。 またデスクトップパソコン「Mac Studio(マックスタジオ)」を刷新。新たな「M2 Ultra」は競合他社の半導体では十分対応できないAIに関する処理を可能にしたという。

新型「Mac Pro(マックプロ)」も発表した。「M2 Ultra」を搭載し、価格は6999ドルから。 マックプロはアップルの製品ラインアップの中でインテル製のチップを使用していた最後のパソコンだった。アップルがインテル製チップの使用を止めたことを受けインテル株価は3.9%安となった。