18日、北京の釣魚台迎賓館で、秦剛国務委員兼外相(右)と握手するブリンケン米国務長官(AFP時事)
18日、北京の釣魚台迎賓館で、秦剛国務委員兼外相(右)と握手するブリンケン米国務長官(AFP時事)

 【北京、ワシントン時事】ブリンケン米国務長官の2日間の訪中は、米中両国の緊張関係を反映した幕開けとなった。18日、北京の釣魚台迎賓館前で出迎えた秦剛国務委員兼外相は、ブリンケン氏と握手を交わしたものの笑顔は少なく、写真撮影時にも硬い表情。冒頭発言は公開されなかった。「対話」は再開されたものの、米中間には依然深い溝が横たわる。米国は決定的危機の発生を避ける対中関係「管理」(ブリンケン氏)に軸足を置いている。

「衝突」回避へ対話維持で一致 台湾問題でけん制も―5時間半にわたり議論・米中外相

 ◇外相会談、5時間半

 「率直で中身のある、建設的な議論だった」。国務省のミラー報道官は会談終了後に発表した声明で、5時間半にわたった協議をこう説明した。ブリンケン氏は会談で「自由で開かれた、ルールに基づく国際秩序を守る世界というビジョンを前へ進めるため、同盟・友好国と共に協力する」と強調したという。

 国務省高官が会談前、「多くの成果を期待しない方が賢明だろう」と予防線を張っていた通り、関係修復に向けた大きな前進はみられなかった。米側は、悪化の一途をたどってきた米中関係の短期間での改善を図るよりも、高官同士の意思疎通を重ねることで偶発的な衝突を回避したい考えとみられる。

 ◇譲れない台湾問題

 中国側も手放しで米国との関係改善に意欲を見せているわけではない。習近平政権は、関係悪化の責任は「米国にある」と繰り返し主張。軍事衝突を避けたい点では米国と一致するが、関係修復はあくまでも中国の体面を保つ形での実現が望ましい。

 中国の著名論客、胡錫進氏はSNSで、米国が台湾との接触を深め続ければ「中米の外交・防衛当局者の接触は根本的な効果をもたらさず、関係の安定は困難だ」と指摘。中国側は会談で台湾問題を「レッドライン(譲れない一線)」とする従来の立場を繰り返した。

 ◇習氏の見解焦点

 一方で変化もあった。トランプ前政権下の2018年10月にポンペオ国務長官(当時)が北京入りした際は、貿易摩擦などによる極度の関係悪化を反映し、中国側が食事の席を設けなかったとされる。形式を重んじる中国としては異例の対応で不満をあらわにした形だったが、今回は秦氏主催で18日夜にワーキングディナーを設定。約5年前とは異なる待遇で、前向きな雰囲気を演出した。

 バイデン米政権は「習氏との直接対話か、習氏に近い人物との協議が必要だと考えている」(米シンクタンク・新米国安全保障センターのジェイコブ・ストークス上級研究員)とされ、習氏がブリンケン氏に自身の考えを直接伝えるかどうかが19日の焦点になる。