[ロンドン 26日 ロイター] – 米資産運用大手ブラックロックがビットコインの現物に投資する上場投資信託(ETF)を設定する計画を打ち出したことを受け、ビットコインは1年ぶりの高値まで上昇した。ただ、金利高や規制当局の締め付けが上昇相場に水を差す可能性をアナリストや業界関係者は指摘する。

ビットコインは先週15%超上昇し、4月以来初めて3万ドルの大台を突破した。ブラックロックが米証券取引委員会(SEC)にビットコインETFの上場を申請したことを好感した。

業界ではこの動きを、米金融業界がビットコインをようやく容認したサインと受け止めた。シタデル・セキュリティーズやフィデリティ、チャールズ・シュワブが出資する暗号資産取引所EDXマーケッツが運営を開始したこともこの見方を裏付けた。

<機関投資家の買いが主導>

暗号資産運用会社アルカのトレーディング・オペレーション担当責任者、ウェス・ハンセン氏は「われわれの見立てやセルサイドのトレーディングデスクの話に基づけば、今回の相場上昇は機関投資家の買いが主導した」と指摘。

暗号資産の仲介業者ジェネシス・トレーディングではブラックロックのETF上場申請を受けて、数十に上る最上位顧客がビットコインの保有を増やしたという。セールス・トレーディング担当責任者のゴードン・グラント氏が明らかにした。

暗号資産関連の融資を手掛けていた米銀シグネチャー、シルバーゲート、シリコンバレー銀の破綻で仮想通貨取引の流動性に関する投資家の信頼が低下したが、ビットコインETFによって回復する可能性があると同氏は述べた。

ただ、米証券取引委員会(SEC)はブラックロックの申請をまだ承認しておらず、これまでもフィデリティーやCboeグローバル・マーケッツなどによるビットコイン連動型ETFを却下してきた。SECは却下の理由として市場操作への懸念を挙げてきた。

<利上げで取引環境悪化>

ビットコインのマイニング(採掘)を手掛けるBTCMのチーフエコノミスト、ユーウェイ・ヤン氏は「根強いインフレと景気後退懸念」が長期的に警戒すべきリスクだと指摘する。

ジェネシス・トレーディングのグラント氏は金利高で投資家は仮想通貨以外の資産でリターンを追えるようになったと話す。「金融システムから額面上多くの流動性が引き揚げられた。全体の資金が縮小し、現金がもはや(価値のない)ごみではなくなった」と述べた。

ビットコインは昨年の安値(1万5479ドル)から持ち直したが、21年終盤に付けた過去最高値の6万9000ドルの半分以下でなお取引されている。

規制を巡る不透明感も相場の重しになっているとアナリストは指摘する。SECは今月、交換業大手のコインベースとバイナンスを提訴しており、ルール違反の取り締まりを強化している。

暗号資産交換所ゾディア・マーケッツのウスマン・アハマドCEOは「SECの活動を巡る不透明感が相場の軟調につながったが、ブラックロックが『支援』を表明したためやや異なる状況になった」と指摘。それでもなお「金利が上昇し続けているためさらなる困難が待ち受けるだろう」と述べた。

(Elizabeth Howcroft記者)