・共和党員と親しくなることから始めよう-オックスフォード大教授
・ESGという言葉はもう使わない-ブラックロックのフィンクCEO

米共和党が主導するESG(環境・社会・企業統治)投資への反発は、関連業界に改革の機会をもたらしている。少なくとも、今週ボストンで開催されたサステナブル投資に関するカンファレンス「グリーンフィン23」では、複数のESG支持者がそうした見方を示している。

  デラウェア州財務官のコリーン・デービス氏は、ESGファクターの今後を巡って交わされる会話が増えるのは、投資戦略の定義の改善を促すため望ましいなどと同カンファレンスで述べた。

  ESGという言葉は2004年に国連関連のチームによってつくられた。それ以来、金融商品や金融に関連した活動の売り込みに使われるようになり、何兆ドルもの投資を集める一方、資金は結局リベラルな理念の支援に使われていると主張する共和党の政治家の怒りも買ってきた。

  10年以上にわたりサステナビリティーの分野に注力してきたオックスフォード大学サイード・ビジネススクールのロバート・エクルズ教授は、気候変動などのESG問題について、多くの穏健派の共和党議員と共通基盤を見いだしたとコメント。カンファレンスの参加者約850人に対し、政治的分断の解消から始めるよう呼び掛けた。

  「共和党員と親しくなることから始めよう」と同教授は言う。

  バーモント州財務官で民主党のマイク・ピーチャック氏の意見も同様だ。同氏は父親が共和党員で、共和党の州知事の下で働いた経験もあると言う。「政治的な壁を打ち破ることが大事だ」と指摘。それは人間関係、対話を通じて成し遂げられる。

  こうしたコメントに先立ち、ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は、ESGという言葉はもう使わない、とイベントで発言。同氏はサステナビリティー投資に関して主張し過ぎたため、共和党からターゲットにされていた。

  ニュースサイトのアクシオスは、「ESGという言葉は、極端な左派と極端な右派によって誤用されており、使うつもりはない」とするフィンク氏の発言を引用している。

  こうした議論について、カリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)の運用者であるエイシャ・マスタニ氏は「人々をテーブルに着かせた」とし、良いことだと評価した。

「真の危険」

  サステナビリティー擁護者と自身を呼び、マイクロソフトで働くマシュー・セコール氏は、ESGの定義の改善が求められると話す。現状ではESGは、財務の計算にESGファクターを組み入れるという、不定形で曖昧な戦略となっている。「ひどい状況だ」と指摘する。

  政治家からの反対を受け、企業がサステナビリティーへの取り組みについて語る機会は減っている。これが「グリーンハッシング」と呼ばれる現象で、グリーンに関する目標を達成する上で、「真の危険」をもたらすとセコール氏は指摘。

  企業がコミュニケーションを取らないと、気候変動などの問題を共同で解決できないとの見解をカンファレンスで示した。

  「われわれが直面している長期的かつ体系的な問題の多くは、一人で解決できるものではない」と同氏は話している。

原題:ESG Advocates Say GOP Backlash Gives Industry an Opportunity (2)(抜粋)