ロイターによると中国の主要国有銀行は1日に、オフショアのドル金利を一斉に引き下げた。続落する人民元に歯止めをかけることが狙いだという。米金利が高止まっている中で異例の利下げになる。「関係者によると、国有銀行5行が提供する大部分のドル預金金利の上限はこれまでの4.3%から2.8%に引き下げられた。中国人民銀行(中央銀行)はコメントを控えた。人民銀はドル預金金利について国有銀行に指針を示すことが多い。金利を引き下げたとされる中国工商銀行(ICBC)、中国銀行、中国農業銀行、中国建設銀行、交通銀行はコメント要請に応じていない」。ロイター情報は「ナイナイづくし」だ。全ての関係者が「知られたくない」といった雰囲気を醸し出している。人民元の国際化を目指している習近平主席にとってもこれは、決して好ましい情報ではない。

中国は昨年末にゼロコロナ政策を廃止し、経済的に今年は復活の年と位置付けられている。ところが蓋を開けてみると輸出が低迷し、頼みの国内消費も一向に盛り上がらない。こうなると得意の政府主導の景気テコ入れ策に期待が集まるが、会議は踊れどまるで小田原評定。小刻みの景気対策は打ち出されるがリーマンショック後の、たしか40兆円を超えるような大規模な景気刺激策は一向に打ち出されない。山のような不良債権にしばられ、後手後手に回る中国政府の対応に業を煮やした投資家が、資金をドルに移し始めた。人民元安が深刻化する。自然の流れだろう。こうした中で中国人民銀行(中央銀行)が密かに国有銀行にドル金利の引き下げを要請しはじめたという。5行がドル金利を7月1日に引き下げた、とロイターは関係筋情報をソースに記事にした。真偽は定かではない。だが、ニュースの流れを見ているとこの記事の信憑性はかなり高い気がする。

オフショアでドル金利を引き下げることによって、個人がドル預金を保有するインセンティブが弱まり、元相場の暴落阻止が可能性になる。直近の人民元は対ドルで7.2元という防衛ラインに近づいている。景気対策として国内の預金金利を引き下げているのだから、ドル金利の引き下げも国内的には自然の流れか。米ドル金利が高止まりしている中での利下げ。どことなく異様な気がする。世界の潮流に逆らって利下げを続けてきた国の一つがトルコだ。だがそのトルコも大統領選挙を経て政策金利の引き上げに踏み切った。もう一つの異常な国が日本。利下げはしないものの貸し出し金利も預金もほぼゼロ。預金金利はゼロコンマの下にいくつゼロがつくのか?虫眼鏡で見てもわからない。金利の低い国の通貨は軒並み暴落している。ロシアのルーブルもプリゴジンの乱を堺に急落に転じている。こちらは政情不安が原因だ。通貨が安いのに胸を張れる国はない。