中国の秦剛前外相=3月7日、北京(AFP時事)
中国の秦剛前外相=3月7日、北京(AFP時事)

 【北京時事】中国外相の突然の交代が25日に公表された後、中国政府は一切の説明を拒み、沈黙を続けている。前代未聞の交代劇の背景については、外交筋や識者も「分からないのが正直なところ」と口をそろえる。一方で、中国外務省の不自然な対応が、内部での「混乱」を露呈しているとも見られている。

外相解任、説明回避続く 中国外務省

 新華社通信が秦剛氏の外相解任と、前任者で格上の王毅共産党政治局員の再登用を報じたのは25日夜。この日以降、中国外務省の公式サイトから秦氏の経歴や過去の会談記録が一斉に削除された。秦氏の処遇は明らかにされていないが、存在すらなかったことにするような当局の対応に、秦氏の「政治的失脚」を読み取る観測も多かった。

 ところが公式サイトは28日、王氏の外相就任談話とともに、秦氏に関する記録を再掲載。外務省報道官は定例会見で、この間の動きに関して「深読みする必要はない」と述べ、海外メディアの疑問をはねつけた。

 中国政治に詳しい神戸大大学院講師で日本国際問題研究所の李昊研究員は「わざわざ削除したものを戻すのは、やはり大きなこと。内部で混乱している証拠ではないか」と指摘。秦氏に対する何らかの調査が進行中で処遇が確定していないにもかかわらず、外務省が早まってサイトから削除してしまった可能性などが考えられるという。

 秦氏は、6月25日を最後に動静が途絶え、重病説や女性問題説といった臆測が拡大。外相を解かれた秦氏だが、兼務する副首相級の国務委員や共産党トップ約200人の中央委員の解任は発表されていない。この理由も不明だ。

 李氏は「外相は『(外交の)顔』なので、早期に対応する必要があった」と考えている。「国務委員の問題がどう処理されるかは今後の注目点だ」と指摘した。