佐野七緒、横山桃花
東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の4社による、企業向け保険料の事前調整が少なくとも計100社に対して行われていたと、日本経済新聞が28日付朝刊で報じた。
事前調整問題を巡っては金融庁が4社に対して報告徴求命令を出しており、9月末までに報告書の提出を求めている。日経新聞の報道によると、各社が調査を進める中で不適切な取引が広範囲に及んでいたことが明らかになった。4社は29日までに報告を提出するという。
報道によれば、損害保険事業の売上高に当たる正味収入保険料で4社は8割超のシェアを握っており、企業向け保険に限ると9割を超えて寡占化が進んでいた。
金融庁は各社から受け取った報告書の内容を精査し、事前調整に至った動機や原因を解明する。保険業法が目的とする保険募集の公正性と保険契約者保護の観点から法令違反が見つかれば、業務改善命令などの行政処分も検討すると同紙は伝えている。
報道について、東京海上の広報担当者は「現在調査中のため、具体的な件数などに関するコメントは差し控えさせていただく」と述べた。損害保険ジャパンの担当者は「コメントを差し控える」としている。
三井住友海上とあいおいニッセイの担当者は「調査中のため答えられない」とし、両社の親会社、MS&ADインシュアランスグループホールディングスの担当者は、報道内容は確認中とし、「金融庁への報告については真摯(しんし)に対応する」と述べた。
米モルガン・スタンレーのティム・チャン氏らはリポートで、日本企業のガバナンスについて、これまで「投資家のアンダーウエートスタンスの主な理由となってきた」と指摘。ただ、ガバナンスが強化されるにつれて米欧企業との「評価格差は縮小すると予想される」と期待感を示した。
保険料の事前調整問題を巡っては、公正取引委員会が独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで4社に対して任意調査を始めたことも分かっている。調査対象は東急と仙台国際空港(宮城県名取市)向けの保険だが、他の事案を調べる可能性もある。
公取委の藤本哲也事務総長は20日の会見で、4社に対する調査などに関連して、「実態解明を行っている。今後、調査状況を踏まえて必要な対応を行うことになる」と述べている。
東京海上は東急の事案に関連して、社内調査の結果、調整行為は同社社員が主導していたとして3月に金融庁に報告したと6月に発表。ただ、共同保険契約の入札がやり直しとなったため、不当な契約には至らなかったという。
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