【エルサレム時事】イスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザに拉致したイスラエル人の人質の一部を解放した。イスラエルとの4日間の戦闘休止合意に伴う措置で、イスラエル側もパレスチナ囚人を釈放。ハマスが追加で人質を解放するたび、戦闘休止を延ばすとされているが、ハマス打倒と人質全員の奪還という目標を掲げるイスラエルは今後、どちらを優先するか難しい判断を迫られる。
イスラエルでは、街の至る場所に人質の写真が貼られ、人々が解放を訴えている。人質家族に同情する国民は人質の帰還に注目している。
双方はガザの人質約240人のうち、計50人の解放で合意。ハマスは24日に第1陣を引き渡したが、全員解放にはほど遠い。イスラエルのネタニヤフ首相は24日の演説で「戦争の目的の一つ」として、全員の帰還を約束した。
一方、同じ演説でネタニヤフ氏は「全ての目的の達成」にも取り組むと強調。イスラエルは休止後に「激しい戦闘」(ガラント国防相)に出る構えで、改めてハマス打倒を誓った。
シンクタンクのイスラエル民主主義研究所が24日に発表した世論調査結果によると、イスラエル国民のうち、ユダヤ人は9割以上が全人質の帰還とハマス打倒の両方を支持。ただ、半数近くが人質解放が最優先だと答えた。妻と娘が帰還した男性は「最後の1人が戻るまで祝わない」と語っており、ハマスが解放を続ける限り、戦闘休止継続を求める国内世論が高まるとみられる。
しかし、戦闘休止でハマスがガザで態勢を立て直すとの見方がある上、囚人の釈放でハマスがヨルダン川西岸のパレスチナ自治区で支持を拡大させると指摘する専門家もいる。いずれもイスラエルが避けたい事態で、人質と対ハマス作戦との間で、どの程度妥協できるかが今後の焦点となる。