鈴木俊一財務相(写真・共同通信)

 ガソリン価格の高騰を抑えるために議論されている「トリガー条項」の発動。小売価格が160円を3カ月連続で超えた場合、1リットルあたりに課税される税金53.8円のうち上乗せ分25.1円が一時的に免除される法律で、2010年に法制化された。だが、東日本大震災復興のため、これまで同法が適用されたことはない。

 税収減になるため、財務省は発動に慎重で、11月24日、鈴木俊一財務相は「国・地方合計で1.5兆円もの巨額の財源が必要」と懸念を表明した。  一方、政府は2022年1月からガソリン価格の激変緩和措置として、石油元売り会社に補助金を支給することで卸売価格の抑制を図ってきた。2023年9月までに投じられた補助金は6兆2000億円にのぼる。

 鈴木財務相の発言を受け、1.5兆円の減税はできないが、6兆円を支出している状況に納得がいかないという声が「X」(旧Twitter)であふれた。
《ガソリン補助金なら6.2兆円出せるが、減税は1.5兆円で済むのに不可。この頭おかしい大臣と財務省の事務次官をクビにしろ。国民を嘗めるな》
《ガソリン補助金6兆円を石油元売り会社にバラマキ、トリガー条項について『財源が1.5兆円足りない』と主張。頭おかしいだろ》
《石油元売りには6兆円以上の補助金を出しておきながら言ってることが支離滅裂でホンマ頭おかしい》 《トリガー1.5兆<補助金6兆で補助金の方が無駄》

 社会の不公正を指弾する前明石市長の泉房穂氏は、「財務省が日本を牛耳る構図が露わになった」と語る。 「鈴木大臣の発言には、財務省のスタンスがよく現われています。財務省という組織はつねに国民に負担を課そうとしていて、国民から取れるもんは全部搾り取るという発想。だから、消費税も上げるのが使命。トリガー条項のような形で負担軽減なんてしてはいけないという思い込みがある。

 1.5兆円なんて大きな額を減税できないと言いながら、かたや補助金として6兆円を企業にばらまく。金を受け取った企業は一部を政治献金し、その関連団体に官僚が天下るという構図。国民からは金を取り、企業は助けてバックマージンをもらう。消費税を上げたぶん、法人税を下げて、それが政治献金や天下りに消えている。

 財務省を中心に、国民から取ってきた金を企業と取り巻きの政治家と官僚が山分けするという政治を30年やってきたわけです。  鈴木大臣は、答弁で原稿を読まされとるだけで、実際に書いとるのは財務省主計局を中心とした『ザ・財務官僚』。彼らの言いなりになって政治家が動いて、財務省の言うことを真に受けてマスコミも財務省の意向に沿った話ばかり報道している。

 財務省なんて、放っておくと国民に負担を押しつけるだけなんやから、政治家が止めなあかん。それなのに、財務大臣は財務省を止めるどころか屈服してしまっている。

 岸田総理が(11月22日の衆議院予算委員会で)トリガー条項を検討すると言った以上、トップの判断に従って財務省も動かなあかん。岸田総理は意に反する大臣を交代すべき。事務次官なんて選挙で選ばれていない単なる官僚なんだから、首をすげかえたらいい。

 でも、そんなことをすると財務省の逆鱗に触れ、ネガティブキャンペーンを張られて、麻生(太郎)副総裁や小渕優子選対委員長を筆頭とする財務省にかわいがられている政治家に反旗を翻される。  結局、総理は自分の保身のために財務省に負けてしまう。適切に人事権を行使せず、財務省をのさばらせている総理が悪い」

 トリガー条項により1.5兆円の税収が失われれば、財源が不足すると財務省は指摘している。だが、泉氏は「嘘です、そんなもん」と一刀両断する。 「今は税収が増えとるから、消費税をゼロにしても10年前の税収と金額は一緒。何がないねん。税金と社会保障負担あわせて、いまは5割も国民から取りまくっとるのに。1.5兆円ないのに、どうして6兆円出すんよ。1.5兆円と6兆円どっちが大きいかなんて、小学校の算数の問題や。

 繰り返しますが、問題は政治家が財務省の軍門に降ってしまっていること。政治家は財務省を指示すべき立場。内閣の一員なんやから、総理は歯向かう大臣の首をすげかえればいい。安倍総理も内閣法制局長官や法務省トップは変えたのに、財務省には言いなりになってしまっていた。

 だいたいトリガー条項は2010年に制定されて、まだ一度も使われていない。総理が政治決断して、『予定どおり使います』と言えばいいだけの話」

 今年度補正予算案は、トリガー条項の検討を条件に国民民主党が賛成に回った。はたして、岸田首相はいかなる決断を下すのか。