トヨタグループ発祥の元ともいうべき豊田自動織機の検査不正問題で新たな事実が発覚した。昨年3月のフォークリフト用エンジンの不正検査に続いて、自動車用エンジンでも不正検査が行われていたことが明らかになった。明らかにしたのは弁護士らで構成された「特別調査委員会」。フォークリフトに関する不正解明を進める中で、“世界のトヨタ”の主力である乗用車用のエンジンでも同じような不正検査が行われていたことが発覚した。伊藤浩一豊田自動織機社長は不正の原因について「トヨとの会話がしっかりできていれば問題は起こらなかった」と反省の弁を述べている。トヨタの佐藤恒治社長も現場と経営陣の「コミュニケーション不足」を指摘する。おそらくそう言う要素はあるのだろう。だが一連の不正検査の裏では、現場のトヨタに対する「忖度」が働いている気がする。トヨタよ、お前も、か。

読売新聞によると不正は以下のようなプロセスで行われていた。「エンジン出力の数値をよく見せるため、燃料の噴射量を実際とは異なる数値に変更し、試験を行っていた」。結果的にエンジン出力を示すデータはきれいな放物線を描き、エンジン性能を実際よりはるかによく見えるように偽装した。このデータをもとにトヨタは形式指定に必要な資料を行政に提出。世界の自動車業界をリードする日本。その要とも言うべきトヨタを舞台にした、技術大国・日本にあってはならないこれが不正の実態だ。これだけではない。「品質よりも開発日程や納期を重視する体質」(読売新聞)が豊田自動織機サイドにあったことも否めない。ものづくりの現場では最終ユーザー(消費者)に品質の良いエンジンを提供するという意識よりも、納入先であるトヨタに対する“見栄え”が重視されていたのだ。

これを「忖度」と言わずしてなんといえばいいのか。トヨタグループの不正は昨年3月に発覚した日野自動車以来ダイハツ工業、愛知製鋼、豊田自動織機と続いている。不正の中身に違いがあっても、その裏には大なり小なりトヨタに対する忖度がある。企業だけではない。自民党のパー券疑惑も派閥の親分に対する忖度が不正に手を染める最大の要因でもある。不正と知りながら派閥の意向に従う政治家。自尊心もなければ、自らを支えてくれる有権者に対する配慮もない。忖度されるトヨタの佐藤恒治社長曰く、「自動車産業の技術開発が高度化する中で、(エンジニアには)簡単にできないと言いたくないというメンタリティーがある」。さすがは技術畑出身の社長というべきか。だがいま必要な人材は「できないとこはできない」と、トップに向かって堂々と言える人ではないか。現場から見ても経営陣から見ても、「非常に根が深い問題」(佐藤社長)を日本社会は抱えている。

ムームードメイン