岸田首相のビデオメッセージが波紋を呼んでいる(政府広報オンラインから)
岸田首相のビデオメッセージが波紋を呼んでいる(政府広報オンラインから)

岸田文雄首相が「共生社会と人権」をテーマにしたシンポジウムに寄せたビデオメッセージに、SNS上でさまざまな意見が寄せられている。日本人が、外国人やマイノリティーを差別していると言及しているため、「『第二の河野談話』になりかねない」などと批判する声が噴出する一方、「首相は『日本人全員が差別している』とは言っていない」と指摘する声もある。

議論になっているのは、法務省などが主催する「共生社会と人権に関するシンポジウム」の開催にあたってのビデオメッセージ(首相官邸ホームページ、5日更新)だ。

岸田首相は以下のように語っている。

《残念ながら、我が国においては、雇用や入居などの場面やインターネット上において、外国人、障害のある人、アイヌの人々、性的マイノリティの人々などが不当な差別を受ける事案を耳にすることも少なくありません》

《近年、外国にルーツを有する人々が、特定の民族や国籍等に属していることを理由として不当な差別的言動を受ける事案や、偏見等により放火や名誉毀損等の犯罪被害にまで遭う事案が発生しており…》

《共生社会を実現するためには、他者との違いを理解し、そして互いに受け入れていくことが重要です》

首相発言に対し、X(旧ツイッター)上では、「例外はあるものの、日本人ほど差別しない民族は居ない」「日本人を差別主義者のように貶めて」「発言を撤回してください」などと批判が相次いだ。

夕刊フジは8日、公式サイトzakzakで今回の騒動について報じた。コメント欄には、「(日本は)寛容な社会」「総理自らが日本国と日本国民を侮辱するなど前代未聞」という意見がある一方、「首相は『日本人全員が差別している』『日本人は必ず差別する』とは言っていません」という指摘もあった。

島田洋一氏
島田洋一氏

識者はどう見るのか。

島田洋一氏「認識おかしい」

福井県立大学の島田洋一名誉教授は「岸田首相の認識はおかしい。欧米などではヘイトクライム(人種や民族、宗教などに係る憎悪犯罪)が多々あるが、日本ではまずない。テレビにも多様な人々が出演している。日本人のマイノリティーへの寛容さは、国際標準からいえば相対的に優れている。首相が公式に発信することで、他国の批判や圧力に利用されるおそれもある。日本人が逆差別される懸念もある」と語った。

石平氏
石平氏

中国から日本に帰化した経験から語る識者もいる。

石平氏「差別なかった」

評論家の石平氏は「私は中国人留学生として来日したが、経験上、大学院でも奨学金など日本人以上に優遇を受けた。就職でも差別を受けた覚えがない。それなのに、岸田首相の『日本には不当な差別がある』という発言が世界に事実として広まってしまう。慰安婦問題に関する河野談話があるが、今回は現在の日本人について述べており、『第二の河野談話』、それ以上に問題だ」と語った。

岸田首相の「ビデオメッセージ」に疑問や批判の声(zakzak)