▽岸田首相の発言はポジティブ、いずれ訪朝も─金与正氏=KCNA<ロイター日本語版>2024年2月16日午前 2:57 GMT+9

岸田首相の発言はポジティブ、いずれ訪朝も─金与正氏=KCNA

[ソウル 15日 ロイター] – 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の妹で党副部長の金与正氏は、日本との関係緊密化に障害はなく、岸田文雄首相が平壌を訪問する日が来るかもしれないと述べた。北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)が15日に報じた。

日本と北朝鮮の正式な外交関係は確立されていないが、岸田首相は北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向け北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記と会談する可能性を探っていると述べた。

これを受け金与正氏は、岸田首相の発言が関係促進を意図したものであれば、ポジティブなものとみなされる可能性があると指摘。「もし日本が相互尊敬と敬意ある行動に基づいて関係改善に向けた新たな道を開く政治的決断を下すなら、両国は新たな未来を切り開くことができるというのが私の考えだ」と述べた。

このような見方は個人的見解としたほか、自身が知る限り、北朝鮮指導部は日本との関係や日本政府との接触について具体的な計画を持っていないとした。

▽北朝鮮キム・ヨジョン氏談話 “日米韓連携に揺さぶり”見方も<NHK>2024年2月16日 5時15分 

北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記の妹、キム・ヨジョン(金与正)氏が日本との関係をめぐる異例の談話で「岸田首相がピョンヤンを訪れる日が来るかもしれない」などとして、日本側の今後の出方を注視する姿勢を示したことについて、専門家からは、日米韓3か国の連携に揺さぶりをかけるねらいがあるという見方が出ています。

北朝鮮のキム・ジョンウン総書記の妹、キム・ヨジョン氏は15日夜、国営の朝鮮中央通信を通じて日朝関係をめぐる談話を発表し「すでに解決された拉致問題を両国関係の障害物としないのであれば、岸田首相がピョンヤンを訪れる日が来るかもしれない」などとした上で「岸田首相の本心をさらに見極めるべきだ」として日本側の今後の出方を注視する姿勢を示しました。

これについて、北朝鮮情勢に詳しい南山大学の平岩俊司教授は「朝鮮半島情勢をめぐり、日米韓3か国は去年、首脳会談を行って結束を強めている。また、韓国とは平和統一を否定し、非常に緊張した関係だ。米韓両国とは異なり、拉致問題という特別な事情を抱える日本にアプローチをかけることで、揺さぶりたい思いがある」と述べ、日米韓3か国の連携に揺さぶりをかけるねらいがあるという見方を示しました。

また、キム総書記の妹による異例の対日談話という形をとった思惑については「権力の中枢により近いメッセージだとアピールできる」と分析しています。

さらに平岩教授は、談話で拉致問題について「すでに解決された」とする従来の立場を繰り返したことを挙げて「自分たちが譲歩してまで日本との関係を積極的に改善する姿勢は残念ながら見えない。日本としては北朝鮮の従来の姿勢を変化させることが第1の目標になる」と指摘しています。

キム・ヨジョン氏談話 全文

最近、岸田日本首相が国会の衆議院予算委員会で、日朝間の現状を大胆に変える必要性を強く感じるとしながら、自分自身が朝鮮民主主義人民共和国の国務委員長と主動的に関係を結ぶことが極めて重要であり、現在さまざまなルートを通じて努力し続けていると発言したという。

私は岸田首相の発言と関連して、日本メディアが、朝日関係の問題について従来と異なる立場を示したものと評価したことについても留意する。

岸田首相の今回の発言が、過去の束縛から大胆に抜け出し、朝日関係を前進させようという真意から出たものであれば、肯定的に評価されない理由はないと思う。

これまで日本がすでにすべて解決された拉致問題や、朝日関係改善とは何の縁もない核・ミサイル問題を前提として持ち出し続けてきたことによって、両国関係が数十年にわたって悪化の一途をたどることになったということは、誰もが認める事実だ。

日本が時代錯誤的な敵対意識と実現不可能な執念を勇気を持って捨て、互いを認めた基礎の上で丁重なふるまいと信義ある行動によって関係改善の新たな活路を切り開いていく政治的決断を下すなら、両国がいくらでも新しい未来を共に切り開いていくことができるというのが私の見解だ。

過去ではなく先を見通すことができる賢明性と戦略的眼目、そして政治的決断を下すことができる意志と実行力を持った政治家だけが機会をつかむことができ、歴史を変えることができる。

日本がわれわれの正当防衛権に対して不当に食ってかかる悪習を振り払い、すでに解決された拉致問題を両国関係の展望の障害物としないのであれば、両国が近づけないわけがなく、首相がピョンヤンを訪問する日が来るかもしれない。

ただ、現在までわが国の指導部は、朝日関係改善のためのいかなる構想も持っておらず、接触にも何の関心もないと理解している。

今後、岸田首相の本心をさらに見極めなければならないだろう。

これはあくまでも私の個人的な見解でしかなく、私は公式的に朝日関係を評価する立場にはない。

チュチェ113(2024)年2月15日 ピョンヤン。

日本政府 情報収集と分析進める

日本政府関係者の1人は「岸田総理大臣が日朝首脳会談に向けた前向きなメッセージを送っていることもあり、日本側の出方を探ろうとしているのではないか」と話しています。

また「拉致問題を解決済みとする北朝鮮側の立場に変化はなく、単なるけん制に過ぎない」という声や「北朝鮮問題で連携する日米韓3か国にくさびを打ち込もうとする動きだ」といった見方など、日本政府内では、さまざまな受け止めが出ています。

政府としては、北朝鮮側から出された今回の談話の意図を慎重に見極める必要があるとして、情報収集と分析を進めています。