▽商業用不動産ローン、米地銀20行余りで急増-当局の警告基準を超える<ロイター日本語版>2024年2月16日 2:06 JST

  • 自己資本の3倍以上にローンを急拡大した銀行注視-規制当局が警告
  • 当局から引当金の積み増しを迫られる銀行がさらに増える可能性も

米国では2023年終盤時点で、規制当局が監視強化が必要になり得るとした水準まで商業用不動産ローン債権を抱えている銀行が二十数行あった。当局から引当金の積み増しを迫られる銀行がさらに増える可能性があることを示している。

  連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁(OCC)の3監督当局は昨年、オフィスビルや小売店舗などの商業用不動産に対する大規模な債務エクスポージャーを慎重に評価するよう、金融業界に警告した。当局はその際、総資本の3倍以上に相当するローンを急ピッチで積み上げた銀行を注視する考えを示していた。

  引当金の積み増しを発表して株安連鎖を引き起こした米地銀持ち株会社ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)は、規制当局が示した基準に迫った最大規模の銀行だったが、NYCBを超える中小銀行も多くあった。より急激かつ突出したエクスポージャーを抱えていたためだ。350社余りの銀行持ち株会社が当局に提出したデータをブルームバーグが分析した。

  規制当局は、商業用不動産ローンのポートフォリオが自己資本の3倍を超える銀行に焦点を当てる方針を通知。その中でも過去3年に50%以上という劇的な伸びを示したポートフォリオを集中的に精査する考えを示した。

  データによると、昨年9月30日時点でローンがこの2つの基準を超えている銀行には、バレー・ナショナル・バンコープ、ワシントン・フェデラル(ワフッド)、アクソス・ファイナンシャルなどが含まれる。これら3行を含めた地銀の多くは、商業用不動産へのエクスポージャーに対する警戒感が高まった1月下旬以降、株価が下落している。背景には、規制当局から引当金の積み増しや配当の抑制を迫られる恐れがあるとの懸念がある。

  当局が実際にこのような追加措置をとるかどうかは、融資の精査結果が左右する。

  もちろん、規制当局の監視対象は基準を超えた銀行に限定されるわけではなく、基準を超えた銀行が必ずしもさらなる懸念を引き起こすというわけでもない。融資のパフォーマンスには大きなばらつきがある。

  バレー・ナショナルは声明文で、商業用不動産ローンの引き受けにおける「強力な実績」とOCCとの数十年にわたる関係に言及し、「多様できめ細かな商業用不動産ポートフォリオに引き続き満足している」と述べた。

  ワフッドは、業界用語で「安定化」と言われる入居中の集合住宅への融資を意図的に拡大したと述べた。ブレント・ビアドール最高経営責任者(CEO)は声明文で「当行の過去の経験やFDICの業界データによると、安定化された集合住宅向けのローンは当行として最もリスクの低いローンだ」と説明。ポートフォリオに含まれるローン債権には通常40%という、かなりのエクイティと、分散されたキャッシュフローがあるという。

  FRB、FDIC、OCCの各規制当局の報道官、およびNYCB、アクソスの広報担当者はコメントを控えたか、コメントの要請に応じなかった。

原題:Dozens of Banks Rapidly Piled Up Commercial Property Loans(抜粋)

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