Rita Nazareth

  • 10年債利回りは一時4.5%に迫る-市場はCPI統計の発表に身構え
  • S&P500種は小幅安、決算期に向け相場上昇は一服も-原油は反落
Stocks Bounce in Final Stretch of Stellar Quarter
Photographer: Yuki Iwamura/Bloomberg

8日の米金融市場では国債相場が総じて下落。地政学的な緊張が和らいだ。トレーダーは、今週予定される重要なインフレデータの発表に身構えている。

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.55%-0.3-0.06%
米10年債利回り4.42%1.80.41%
米2年債利回り4.79%4.00.85%
  米東部時間16時45分

  10年債利回りは一時、昨年11月以来の水準に上昇し、4.5%に迫った。この水準は、長期金利が昨年の高水準に再び達するかどうかを見定める重要な節目として一部で注目されている。米金融当局が予想する年内3回の利下げに対するトレーダーの確信は急速に失われつつあり、市場は現在、2回の利下げ予想に傾いている。

米利下げ予想、年内2回に市場傾く-10年債利回りは4.5%視野

  ブルームバーグが実施したエコノミスト調査では、10日発表される3月の消費者物価指数(CPI)は幾分かのインフレ圧力緩和を示すと予想されている。ただ食品とエネルギーを除くコアCPIについては前年比3.7%上昇と、なお金融当局の目標である2%を上回ると見込まれている。

  モルガン・スタンレーのマクロ戦略グローバル責任者、マシュー・ホーンバック氏は米国で観測された皆既日食を引き合いに出し、「6月利下げ観測を覆う影が大きくなるのか、それともただ通り過ぎるだけなのか、3月のコアCPIが決定づけることになろう」と述べた。

Treasury 10-Year Yield Within Striking Distance of 4.5%

  一部金融当局者はインフレの根強さが続いた場合の利下げに対し疑問を呈しており、今週のインフレ指標は当局者にとって極めて重要なデータとなる可能性があると、モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏はみる。

  「金融当局はインフレデータが2カ月連続で予想を上回ったことについて深読みする姿勢はあまり示さなかったが、3カ月連続となれば考えを変える可能性がある」と、ラーキン氏は予想した。

  マイケル・フェローリ氏らJPモルガン・チェースのエコノミストは、3月の米雇用統計が強い内容だったことを受け、米利下げ開始時期に関する予想を修正した。これまでは6月の利下げ開始を見込んでいたが、現在は7月の開始を予想している。

JPモルガン、7月の米利下げ開始見込む-従来の6月から予想修正

  グレンミードのジェーソン・プライド氏は「投資家は金融緩和を待ち望んでいるようだが、現在の環境は利下げを強く求めてはいない」とし、「強い労働市場や製造業活動の拡大、資源価格の上昇を踏まえると、金融当局は利下げを急がない可能性が高い」と述べた。

  ブルームバーグのデータによると、金利スワップ市場の動向からは今年の米利下げ幅がおよそ60ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)となることが示唆されている。これは利下げが2回となる可能性が最も高いことを意味し、初回利下げは9月までに実施されると予想される。5日の時点では、3回目の利下げが実施される確率がなお50%を上回っていた。

米国株

  米国株市場ではS&P500種株価指数が小幅安。日中は上げ下げを繰り返す場面もあった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5202.39-1.95-0.04%
ダウ工業株30種平均38892.80-11.24-0.03%
ナスダック総合指数16253.965.440.03%

  パラグ・サッテ、ビンキー・チャダ両氏らドイツ銀行のストラテジストは、決算シーズンに向けて株式相場の上昇は一服する可能性が高いと指摘。ブラックアウト期間を通じて自社株買いが縮小するほか、季節的な要因から株式市場への資金流入が横ばいになるためだとしている。

  米国株は1-3月(第1四半期)に好調な展開を見せたが、ウォール街は今週からの決算シーズンが控えめなものになると予想している。

  ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)がまとめたデータによればストラテジストらは指数構成企業の1-3月期は前年同期比での利益の伸びが2019年以降最低の3.9%にとどまると見込む。ただ、予測が過度に暗いものであったと後で判明しかねないリスクもありそうだ。23年10-12月(第4四半期)には利益予想が1%程度の伸びだったのに、実際には8%以上の増加となった。

米決算シーズン到来で注目の5つのテーマ、潤沢な現金や利益率改善

  トレジャリー・パートナーズのリチャード・サパースティーン氏は「最近見られるインフレの根強さを受けて利下げの切迫感は弱まっており、それは今後の相場上昇をもたらす企業利益を一段と圧迫することにつながる」と分析。「相場の割高感や債券利回り上昇を踏まえ、決算シーズンで利益成長の明確な証拠が示されるまで株式には慎重な姿勢を続ける」と語った。

為替

  外国為替市場ではドルをはじめ逃避通貨が下落した。主要通貨では北欧通貨が上げを主導した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1241.02-1.68-0.14%
ドル/円¥151.85¥0.230.15%
ユーロ/ドル$1.0858$0.00210.19%
  米東部時間16時45分

  ドルは対円で0.15%高の1ドル=151円85銭近辺。一時は151円94銭まで上げた。

  スティーブ・イングランダー氏らスタンダード・チャータードのアナリストは、「ドルが152円を上回れば日本当局による介入が予想されるが、突破した直後ではなさそうだ」とし、「市場は円をショートにしているようで、介入すればうまくいくだろう。だが、当局は2022年介入時の600億ドルを上回る資金を投じる可能性がある」と分析した。

原油

  ニューヨーク原油相場は反落。イスラエルがパレスチナ自治区ガザから一部部隊を撤収させていると7日に発表し、地政学的リスク低下の兆候が示された。テクニカル指標面からも、最近の上昇は行き過ぎとのシグナルが見られていた。

  中東情勢の緊迫化や供給ショックを受け、ブレント原油は先週、5カ月ぶりの高値を付けていた。ただ、相対力指数(RSI、9日間)は買われ過ぎの領域に入り、下落の可能性を示唆していた。複数のトレーダーによると、原油先物のアルゴリズムもロングポジションが最大限に達していた。

Crude Falls After Hitting Technical Resistance | Brent 9-day rose 70, signaling overbought conditions

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は前日比48セント(0.6%)安の1バレル=86.43ドルで終えた。ロンドンICEの北海ブレント6月限は79セント下落し90.38ドル。

  金スポット相場はオーバーナイトの取引で一時1オンス=2350ドルを上回って最高値を更新したが、その後は上げ幅を縮小した。投資家の関心は今週発表される米CPIに移っている。

  米国債利回りが年限短めの国債を中心に上昇したことが、利子の付かない金相場への重しとなった。利下げにはインフレ鈍化のさらなる証拠が必要との立場を米金融当局が示していることも背景にある。 

  UBSグループは年末の金価格予想を11%引き上げ、1オンス当たり2500ドルとした。ジョバンニ・スタウノボ氏らアナリストはリポートで、金を裏付けとした上場投資信託(ETF)への需要が、年央に見込まれる米利下げ後の金の一段高を支えるだろうと予想した。

UBS、年末の金価格予想を1オンス=2500ドルに上方修正

  一方でTDセキュリティーズのシニア商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は、中東情勢のさらなるエスカレートがなく「逃避買い関連需要が過大である」ことを踏まえると、金相場は流れが反転する可能性があるとリポートで指摘した。

Bullion Retreats From Fresh Record | Traders await a slew of US data later this week

  金スポット相場はニューヨーク時間午後3時28分現在、0.4%高の1オンス=2339.58ドル。オーバーナイトの取引では2353.95ドルの最高値を付けていた。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は5.60ドル(0.2%)高の2351ドルちょうどで引けた。

原題:Bond Yields Hit 2024 Highs With Inflation in Focus: Markets Wrap(抜粋)

Haven Currencies Ease as Shares, Yields Firm: Inside G-10

Oil Rally Takes Breather With Israel to Pull Some Gaza Troops

Gold Trades Near New Record Before Pivotal US Inflation Print