• イランとイスラエルの対立は新局面、市場は報復の連鎖懸念
  • 原油相場にさらなる上昇観測、空の旅に混乱、独首相が訪中

イランがイスラエルへの直接攻撃に踏み切り、世界原油生産の3分の1を占める中東地域での紛争拡大から原油相場では一段の上振れリスクが懸念されています。金融市場では原油高によるインフレ再燃が意識されそうです。イラクによる攻撃前の12日時点で、複数の米地区連銀総裁からは「利下げを急ぐ必要ない」との見解が相次いで出されました。3月米消費者物価指数(CPI)を受けて後退した年内の米利下げ観測はさらに修正を余儀なくされるかもしれません。以下は一日を始めるにあたって押さえておきたい5本のニュース。

対立は新局面に

イランのミサイルと無人機によるイスラエルへの攻撃は、不安定な中東地域にとって危険な転機となった。イラン国内からの直接攻撃は前例のない行動であり、イランは大成功を収めたと宣言。しかし、無人機などの大半を迎撃したイスラエル側も、大成功を収めたと強調している。米国を含む同盟国は、イスラエルが自制し、事態をさらにエスカレートさせないことを望んでいる。ただイスラエル国内には、早急に手痛い反撃を実行しない限り、イランとその代理勢力から弱腰と判断される可能性が高いと指摘する声もある。

報復の連鎖懸念

週明けの金融市場は地政学リスクを強く意識した展開となりそうだ。今回のイランの攻撃が報復の応酬に発展することが警戒される。昨年10月にイスラム組織ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を行って以降、多くの市場関係者が最も恐れていたのは、イランが紛争に直接関与するようになることだった。それが現実となった今、原油価格はバレル当たり100ドルを突破し、逃避需要から米国債や金、米ドルなどに資金が向かうことも予想される。市場への影響は、イスラエルの対応次第だと専門家は指摘している。

リスク見直し

イランとイスラエルの対立激化により、原油トレーダーは地政学的リスクプレミアムの再評価を迫られることになる。北海ブレント原油先物はすでに需給要因などを背景に1バレル=90ドル超の水準に上昇している。UBSグループのアナリスト、ジョバンニ・スタウノボ氏は「イランが自国領土からイスラエルを攻撃したのは今回が初めてであり、原油相場は取引開始と同時に急伸するかもしれない」と指摘。「上昇がどの程度続くかはイスラエルの対応にもよるだろう」と述べた。取引はニューヨーク時間14日午後6時(日本時間15日午前7時)に再開する。

空の旅に混乱

イランがイスラエルへの直接攻撃に初めて踏み切ったことを受け飛行区域が制限された世界の航空各社は、欧州とアジアを結ぶ路線をこれまで以上に絞り込む方向で検討している。カンタス航空やシンガポール航空、ドイツのルフトハンザ航空など多くの航空会社がルート変更や紛争地域上空の飛行回避に動いており、飛行時間の延長や燃料費の増加につながりそうだ。クウェート航空は「緊張地帯」を迂回(うかい)すると発表した。

独首相が中国入り

ドイツのショルツ首相が中国訪問を開始した。ショルツ氏は、差別的な商慣行をやめるよう求める欧州連合(EU)の警告に中国政府は従っておらず、行動がなければ緊張の激化を招き得るというデリケートなメッセージを発するとみられる。関係者によれば、ショルツ氏は中国の習近平国家主席に対し、電気自動車(EV)含む貿易関係に大きな影響を及ぼすEUの関税を回避するため、早急に行動する必要があると警告する方針。

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