Rita Nazareth

  • 今週はS&P500種構成企業のうち約180社が決算発表
  • 米企業の業績見通し巡り、株式ストラテジストの間で意見が分かれる

22日の米株式市場では、S&P500種株価指数が反発。前週末までの下げで2兆ドルの時価総額が消失していたが、大手ハイテク株の決算が高い見通しに達するとの期待から買いが入った。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5010.6043.370.87%
ダウ工業株30種平均38239.98253.580.67%
ナスダック総合指数15451.31169.301.11%

  S&P500種構成企業のうち、約180社が今週、決算を発表する。その時価総額は指数全体の40%余り。ブルームバーグ・インテリジェンスによると、いわゆる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手テクノロジー企業の一角は、利益が前年同期比40%近く増加すると予想されている。

  ミラー・タバクのマット・メイリー氏は「コンセンサス予想を上回る業績だけでは、今回は十分ではない。株式相場が再び上昇するためには、米企業のガイダンスがもっと良くなる必要がある」と述べた。

  米企業が今年の業績について力強い見通しを示せるかどうかを巡り、ウォール街大手銀行の株式ストラテジストの間で意見が分かれている。モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は景気が力強さを増し、利益の伸びが改善するとの見通しを示した。一方、JPモルガン・チェースのストラテジスト、ミスラフ・マテイカ氏は、インフレやドル高、最近の地政学的緊張の高まりが見通しを曇らせていると主張する。

  ブルームバーグが実施した最新のマーケッツ・ライブ(MLIV)パルス調査によると、409人の回答者のうち3分の2近くが、決算が株価指数を押し上げるとの見通しを示した。

米企業の業績見通し、ストラテジストの意見分かれる-株価伸び悩む中

  S&P500種は7営業日ぶりに反発し、再び5000台に戻した。ナスダック100指数は1%上昇。エヌビディアがけん引役となった。バンク・オブ・アメリカ(BofA)は、アップルを2024年のトップピックに指定した。近く発表される決算への楽観や中長期的な見通しの明るさを理由としている。

アップルを24年のトップピックに指定、1-3月決算控え-BofA

  ヘッジファンドは世界的な株買いを再開しつつあり、全般的な市場のボラティリティーにも動じず、約2カ月ぶりの速いペースでテクノロジー株を買い進めていると、ゴールドマン・サックス・グループのトレーディングデスクが分析した。

ヘッジファンドが株買いに転じる、不安定な環境でも-ゴールドマン

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「金利上昇や根強いインフレ、地政学的リスクに対する懸念は全くなくなっていない。しかし、今週はテクノロジーセクターが主役になるだろう」と語った。

  UBSグループの米国株式チーフストラテジスト、ジョナサン・ゴラブ氏は「利益の伸びが急上昇した後、業績の勢いは明らかに失速している」と述べた。

   今週の決算発表を前に、UBSはアップル、アマゾン、アルファベット、メタ、マイクロソフト、エヌビディアの「ビッグ6」の投資判断を「オーバーウエート」から「ニュートラル」に引き下げた。

UBS、「ビッグ6」ハイテク株の投資判断をニュートラルに引き下げ

  シティグループのストラテジストによると、米国株は企業の業績に支えられているが、成長期待とセンチメントの高まりが逆風になっている。

  スコット・クロナート氏率いる同行のチームは、第1四半期の利益がボトムアップ形式で集計されたコンセンサス予想を上回る確率を76%と分析。しかし、2024年の残りの期間については、利益が上振れする可能性は49%に低下し、企業がガイダンスの引き上げに消極的になる可能性を示唆している。

  コースタル・ウェルスのジェレミー・ストラウブ氏によれば、今週は市場にとって重要な週であり、大型ハイテク企業の決算と26日の重要なインフレ指標が市場の短期的な見通しを塗り替える可能性がある。

  同氏は「大手ハイテク企業の決算と26日のインフレ指標が期待外れだった場合、現在の株式相場の調整期間と深さが拡大する可能性がある」と指摘。「株式相場には下落余地があるかもしれないが、2024年全体では株式への建設的な見方を維持する」とした。

  米国債相場はもみ合い。投資家の意欲を試すことになる国債入札を控えている。利回りは先週、2024年の最高水準に達した。

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.71%0.20.04%
米10年債利回り4.61%-1.2-0.26%
米2年債利回り4.97%-1.7-0.33%
  米東部時間16時55分

  外国為替市場ではドル指数がほぼ変わらず。円相場は一時1ドル=154円85銭に下落。34年ぶりの円安・ドル高を再び更新した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1264.28-0.09-0.01%
ドル/円¥154.84¥0.200.13%
ユーロ/ドル$1.0655-$0.0001-0.01%
  米東部時間16時56分

  BoFAセキュリティーズのアナリストは「日銀は無担保コール翌日物金利を0-0.1%に据え置くと予想する」としている。ブルームバーグがエコノミスト54人を対象に行った調査でも、53人が今回の決定会合で現状維持を予測している。

  TDセキュリティーズの外国為替・新興国市場戦略世界責任者、マーク・マコーミック氏は「今週の個人消費支出(PCE)コア価格指数は、今年最も重要な統計の1つになると思われる。穏やかな数字になれば、第3四半期にかけてドルが小幅に反転するとの当社の見通しを後押しする可能性がある」と記述した。

  原油相場は小幅安。中東情勢を巡る不安が和らいだことで売りが優勢となったが、テクニカルな要因が下値を支えた。

  中心限月であるウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)6月限は1.9%急落した後、1バレル=82ドル近辺に落ち着いた。50日移動平均線が一定の支援を提供した。

  もっとも、米下院がイランの石油部門への制裁措置拡大案を可決し、イスラエルとイランの対立による緊張が続いていることから、今後も振れの大きい展開となる可能性がある。先週は、週間ベースで2月以来の大幅な下げを記録した。

米下院、イラン石油制裁拡大を可決-外国の港湾・船舶・製油所も対象

  CIBCプライベート・ウェルスのシニア・エネルギー・トレーダーのレベッカ・バビン氏は「原油価格が50日移動平均線を維持するか見極めてから、持ち高を増やしたいと買い手は考えている」と指摘。「夏に向けて強気なムードが高まっており、投資家の多くは夏季のドライブシーズンに向けてすでにロングポジションだ。下落局面で押し目買いを入れる原資が乏しくなっている」と続けた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物5月限は前営業日比29セント(約0.4%)安の1バレル=82.85ドルで終了。6月限は0.4%安の81.90ドル。ロンドンICEの北海ブレント6月限は29セント(0.3%)下落の87ドルちょうどで終えた。

Oil Markets Enter Uneasy Calm | WTI bounces off of monthly lows as 50-day moving average acts as a support

  金相場は大幅反落。中東情勢を巡る懸念が後退し、逃避先としての需要が低下した。

  イランとイスラエルが互いに相手の領土を直接攻撃したことで、中東で全面戦争が勃発しかねないとの警戒が強まり、金は足元で大きく買われていた。だが、イランは22日、イスラエルは「現段階で必要な対応」を受けたとの見解を示し、事態がエスカレートするとの危機感が和らいだ。

  ABCリファイナリーのインスティチューショナルマーケッツ担当グローバル責任者、ニコラス・フラッペル氏(シドニー在勤)は、イラン政権がイスラエルの攻撃をそれほど重大視せず、報復しない意向を示唆したことで、金相場からリスクプレミアムが幾分取り除かれたと指摘。原油相場の弱気なムードも、中東の緊張緩和との見方を後押ししたと述べた。

  ただ、金は依然として年初来およそ13%上昇。中央銀行に加え、とりわけ中国などアジアからの旺盛な需要に支えられている。

金の歴史的高騰、主役は中国-不透明な時代に個人も中銀も金塊に注目

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時51分現在、前営業日比63.87ドル安の1オンス=2328.06ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は67.40ドル(2.8%)安の2346.40ドル。

Gold Falls Amid Easing Middle East Tensions | Metal is still up about 13% so far this year

原題:Stocks Climb as US Earnings Kick Into High Gear: Markets Wrap(抜粋)

Dollar Stuck in Range as Equities Jump, Gold Dips: Inside G-10

Oil Slides as Technical Support Vies With Limited War Risks

Gold Tumbles as Haven Demand Wanes Amid Easing War Risks