• 現時点で年間180億ドル相当の輸入品に影響へ-ホワイトハウス
  • バイデン、トランプ両氏はともに中国に対するタフな姿勢を訴え
Joe Biden speaks at the White House in Washington, DC on May 14.
Joe Biden speaks at the White House in Washington, DC on May 14. Photographer: Samuel Corum/Sipa

バイデン米大統領は中国からの輸入品に対する大幅な関税引き上げを発表した。11月の米大統領選での再選を目指し、重要産業で国内製造業の強化を図る。

  大統領は関税引き上げを、窃盗や欺瞞(ぎまん)、不当な廉価販売から米国の労働者と企業を守るために必要な措置だと正当化した。

  半導体チップやバッテリー、太陽電池、重要鉱物を含む広範囲にわたる中国製品について、輸入関税率を引き上げる。先に引き上げの方針が伝えられた一部の鉄鋼やアルミニウム、電気自動車(EV)に加え、港湾クレーンや医療用品の関税率も引き上げる。ホワイトハウスは、現時点で年間180億ドル(約2兆8200億円)相当の輸入品に影響が見込まれるとしている。

  「中国の戦術は競争ではない。競争を否定するずる賢い行為だ。米国にその被害が及ぶのをわれわれは目にしてきた」とバイデン大統領は14日、ホワイトハウスのローズガーデンで述べた。

  今回の動きは、最初にトランプ前大統領が課した対中関税の最も包括的なアップデートであり、対中貿易へのタカ派的アプローチが引き続き米有権者の間で人気があることを認めるものだ。トランプ前政権が課した対中関税の引き下げはない。

  バイデン大統領は、米国として新型コロナウイルス禍で輸入に困難を抱え、政権が発足してからは増強を図ってきた半導体チップや環境に優しいエネルギーなど主要産業に絡んだ製品の関税率を引き上げる。

  「中国政府は国内企業に国家予算をつぎ込んでいる」とバイデン氏。「中国はこれらすべての製品に多額の補助金を出し、世界が吸収できる量をはるかに超える生産を中国企業に促し、そして余った製品を不当に安い価格で市場にダンピングしている」と説明した。

  ただ、バイデン政権は注意深くバランスを取る必要がある。関税引き上げは既に高インフレの打撃を受けた米消費者にさらなる物価上昇をもたらすリスクがあるほか、中国側が反発して報復措置を講じる恐れもある。

  中国との対立を望んでいるのではなく、ただ 「公正な競争 」を望んでいるだけだとバイデン氏は主張。関税は国民が欲しい自動車を買うことを制限するものではないと、消費者の理解を求めた。自身のアプローチは、中国製品全体を対象としたトランプ前大統領の関税方針より好ましいと主張。トランプ氏のやり方は米国の家計に1500ドルのコスト増という負担をかけると批判した。

  新たな関税措置は2024年から26年にかけて時期をずらして発効が予定され、トランプ氏がホワイトハウス返り咲きの場合に打ち出すとしている一律60%の対中関税に比べて的を絞ったものとなる。EVの輸入関税率が4倍と最も大幅な引き上げとなり、この他の輸入品は2倍となったり、初めて賦課の対象となったりする。

  中国は直ちにこれを強く批判。対抗措置を講じると表明した。ただ措置の具体的内容には触れていない。

  中国商務省は声明で、「中国は自国の権利と国益を守るため断固たる措置を講じる」と表明。「米国は誤った行動を直ちに修正し、中国に対する関税引き上げを取り消すべきだ」と付け加えた。

中国、「断固たる措置講じる」と表明-米政権による関税引き上げ受け

President Biden Speaks On Investing in America Agenda
バイデン米大統領Photographer: Alex Wroblewski/Bloomberg

ターゲット

  中国製半導体の輸入関税率は現行の25%から、25年までに50%に倍増される。米国での生産増強に向けた多額の補助金を通じ、バイデン大統領が製造業強化策の中核としてきた半導体産業をターゲットとするものだ。

  賦課の目的は、比較的古い世代の部品でありながら、世界経済にとって引き続き重要ないわゆる「レガシー半導体」の生産を中国が加速させるのに対抗することだ。バイデン政権は最近、自動車や航空宇宙、国防などの100社余りを対象として、こうした旧世代半導体のサプライチェーンの調査を終えたところで、欧州連合(EU)も同様の独自調査の開始を検討している。

中国が旧型半導体の生産急ぐ、警戒強める米欧は新たな戦略議論

  一部の重要鉱物と港湾クレーンは今年、25%の関税を新たに課され、天然黒鉛と永久磁石は26年に同率の関税賦課の対象となる。

  EVの輸入関税率の引き上げは今年発効の予定で、現行の27.5%が最終的に102.5%となる。中国からの鉄鋼・アルミ輸入のうち、現在の関税率が0%ないし7.5%の製品については今年25%に税率を引き上げる。

  EV向けリチウムイオン電池とバッテリー部品の関税率は今年、7.5%から25%に引き上げられ、EV向け以外のリチウムイオン電池の関税率も26年に同様の引き上げとなる。太陽電池の関税率は今年、25%から50%と2倍になる。

  米国は今年このほか、中国製注射器・注射針に50%の関税を新たに課す。人工呼吸器やマスクなどの個人用防護具の関税率は現行の0%ないし7.5%から25%に引き上げられ、ゴム製医療用・手術用手袋の関税率は7.5%から26年には25%となる。

  こうした措置が中国による報復関税の賦課を招くかどうかは不明だ。しかし、23年のデータに基づいて米政権が提供した推計によれば、トランプ政権下で提案された関税制度は既に2260億ドル相当の物品に適用されている。

  イエレン米財務長官は13日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで、中国が大規模な報復に出ないことを望むとしつつも、その可能性は常にあると述べた。

  イエレン長官は声明で、「バイデン大統領と私はこれまでに、人為的に低価格に設定された中国からの特定の輸入品急増が米国のコミュニティーに影響を及ぼすのを直接、目にしており、その再発は容認しない」とした上で、「問題は時間をかけて増大してきたもので、1日にして解決されることはない」と表明した。

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原題:Biden Accuses China of ‘Cheating’ on Trade, Imposes New Tariffs(抜粋)