トヨタ、ホンダなど日本を代表する自動車メーカーの型式認証における不正検査が発覚した。トヨタ自動車の豊田章男会長は謝罪会見で「ブルータスお前もかという感じ」と、検査担当現場に裏切られたとの感想を述べている。気持ちはわからないわけではない。だが、ユーザーから見れば「何をいまさら」と言いたくなる。日野自動車、豊田自動織機、ダイハツと続いたグループ企業の不正検査のたびに、「トヨタに不正はない」と言い続けてきた会長の発言である。利用者ならずとも「トヨタお前もか」と言いたくなる。不正は不正、同情の余地なはいのだが、ちょっと気になることがある。記者会見に同席した宮本真志・カスタマーファースト推進本部長の次の発言だ。「より厳しい条件でクルマの開発をしているという自負もあり、認証という意識がちょっと薄かったということは否めないとも思う」。

これはどう言う意味か、主要メディアの報道ではよくわからない。ネットで探して次の記事を見つけた。日経X T E C Hの「トヨタが6項目の試験で認証不正、牽制機能は十分か」だ。トヨタの不正は6つある。(1)前面衝突時の乗員保護試験、(2)オフセット衝突時の乗員保護試験、(3)歩行者頭部及び脚部保護試験、(4)後面衝突試験、(5)積み荷移動防止試験、(6)エンジン出力試験。このうち(1)~(5)は悪質性が低い。例えば、(3)の歩行者頭部及び脚部保護試験は、ルールでは衝撃角が50度であるのに対し、トヨタは65°で試験を行っている。そのデータを基に認証申請を行った。実は、トヨタは認証試験よりも厳しい基準(条件)で開発を行っている。そのため、実質的な性能に問題はないのだが、認証試験では、法規が定めた手順や条件の通りに試験を行わないと不正と判断される」のだそうだ。

これを読んで不正の意味が少しわかった気がする。より安全な車を求めて基準より厳しい条件で試験を行っても、それは違反と判断される。不正があっても安全性に問題はない理由がここにある。朝日新聞はこれに関して「より厳しい試験と言うが」と疑問を呈す。「世界基準のルールがあるなか、日本だけが違う試験をやっていいことにはならない」と指摘する。「より厳しい試験」ではなく、世界の甘いルールに合わせろと言うわけだ。何かあると「世界に遅れる日本」と批判的論調を展開する朝日だが、ここでは「世界より先に出るな」と言っているに等しい。日経T E C Hは「(トヨタの)試験は手順や条件が異なるため不正だが、認証試験が求める性能値は超えている」と解説する。検査を所管する国土交通省はこの問題にどう対応するのか。想像だが「ルール違反」一点張りのような気がする。

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