秋の自民党総裁選に向け、麻生副総裁率いる麻生派(55人)の動向に注目が集まっている。麻生氏が岸田首相の後ろ盾となる一方、「ポスト岸田候補」の河野デジタル相は再出馬の意向を固めたためだ。派内では、河野氏に懸念と期待感が交錯しており、2021年の前回総裁選に続き、支持動向が分かれる可能性がある。

「勝てる顔」

 麻生氏と河野氏の26日夜の会食は東京・赤坂の日本料理店で行われた。河野氏から声をかけたもので、両氏は5月21日にも河野氏の誘いで会食した。河野氏周辺は「これだけ頻繁に食事に誘うのは、出馬の意欲の表れだ」と指摘した。

 河野氏は、総裁選に出馬する場合、所属する麻生派を固めつつ、抜群の知名度を武器に衆院選で「勝てる顔」であることをアピールする考えとみられる。

 政治資金規正法の改正を巡り、麻生氏と岸田首相には微妙な距離感が生まれている。麻生派の田中和徳・元復興相は26日、自身が会長を務める議員連盟の会合で「総裁選で新しいリーダーが選ばれ、我々を導く」と述べた。首相交代を念頭に置いた発言だ。

 派内の中堅・若手には「総裁選では河野氏を立てて戦うべきだ」と期待する声がある。

 ただ、派内のベテランや中堅の一部には、「脱原発」を訴えてきた河野氏の政策に警戒感が強い。

 前回総裁選に河野氏が出馬した際も、同様の理由から投票先は各所属議員の判断に委ねられた。同派中堅は「状況は3年前と同じ流れになってきている」と語った。

ジレンマ

 河野氏には、派閥の支持を得れば得るほど、関係の近い菅前首相の支援は難しくなり、非主流派の支持は限定的になるというジレンマもある。菅氏は派閥解消を強く主張しており、派閥を退会しない河野氏に不満を抱いているとされる。

 麻生氏自身も、河野氏が今回の総裁選に出ることには慎重とされ、派内では別の総裁候補として、安定感が評価されている鈴木財務相を推す声もある。

 一方、首相は総裁選再選に向け、麻生氏や麻生派の支持を期待し、関係改善に躍起になっている。25日夜には都内で麻生氏と3時間にわたって会食した。総裁選や憲法改正などが話題になったという。

 首相と麻生氏の会食は2週連続で、党内では「再選は危うくなっているという首相の強い危機感の表れだ」との見方が広がった。