厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で、竹内紀臣撮影
厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で、竹内紀臣撮影

 2024年度の最低賃金(時給)について、中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は24日、50円(5%)引き上げるとする目安を決めた。各都道府県が目安額通りに引き上げると、全国加重平均の時給は1054円となり、現在の1004円を大きく上回る。

 最低賃金は、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の下限額。①賃金②労働者の生計費③使用者の賃金支払い能力の3要素を考慮し、労使の代表と有識者からなる厚労省の審議会が目安額を決定。これをもとに、各都道府県の地方審議会がそれぞれ上げ幅を定め、例年10月以降に適用する。Advertisement

 目安額は都道府県を3ランクに分けて決定する。今年度はAランク(東京、大阪など6都府県)、Bランク(北海道、福岡など28道府県)、Cランク(岩手、沖縄など13県)の目安額はいずれも50円。B、Cランクの地域で雇用情勢が良かったためで、同額となるのは異例だ。目安通りに改定されれば、最も高い東京都の最低賃金は1113円から1163円となる。全国で最も低い岩手県は893円から943円となり、全都道府県で900円を超える。

 今年の春闘では大企業を中心とした賃上げ率が5%台に達し、33年ぶりの高水準に。労働者代表の連合は「歴史的な賃上げの流れを社会全体に広げる必要がある」として67円の引き上げを求めていた。

 一方、中小・小規模事業者の賃金上昇率は2・3%と小幅で、使用者代表の日本商工会議所などは「賃上げは重要だが、小規模な企業ほど価格転嫁が進まず、企業規模による格差が生じている」と主張し、大幅な引き上げには慎重な姿勢を示していた。

 過去最高の上げ幅となったが、各国の最低賃金の水準は日本より高い。全労連の23年12月時点のまとめによると、英国2102円▽ドイツ1976円▽フランス1834円▽韓国1103円。米国は連邦最低賃金のほかに、独自に設定する州や市があり、ワシントン州では2346円となっている。

 政府は30年代半ばに全国加重平均を1500円に引き上げる目標を掲げ、さらなる前倒しを目指している。35年度に1500円とする場合、毎年度で平均3・4%の引き上げが必要となるが、今年度は5%と大きく上回った。【奥山はるな、塩田彩】