兵庫県の斉藤知事が県議会議員の全員一致で解任された。問題の経緯など改めて書く必要もないだろう。連日テレビなど主要メディアがあること、ないこと、ファクトテェックもせず報道している。個人的にこの問題に興味を持っているのは斉藤知事の倫理観でもパワハラ疑惑でも、みみっちいおねだり疑惑でもない。県の百条委員会の調査結果も出ていないうちに、県議会議員が与野党含めて全員一致で解任を可決したことだ。解任反対はゼロ。まるで中国や北朝鮮の議決方式を見ているようだ。民主主義国家ではあり得ない事態という気がする。おそらく兵庫県議会議員には何か特別な力が働いているのではないか、そんな気さえしてくる。そんな折、P R E S I D E N T  Online(9月16日付)でジャーナリスト・元木昌彦氏の原稿を見つけた。そこには主要メディアが報じない事実が記されていた。私が何か書くより元木氏の記事を紹介した方が早いだろう。

四面楚歌の中で「なぜ(斉藤氏は)ここまでして知事の座にしがみつくのか?」。自問に答える形で同氏は、斉藤知事にまつわる疑惑の数々について検証を行なっている。「私は天邪鬼(あまのじゃく)だから、多くの人が右を向くと、左を向きたくなる。斎藤知事は、『赤旗』日曜版で裏金問題を暴露されたカネまみれの自民党議員たちよりも“悪質”で、どうしようもない人間なのだろうか?冷静沈着に見えるのは、人間の感情をなくした冷血漢だからなのか?」。私も天邪鬼。同氏の斜に構えた問題設定が非常によくわかる。とりわけ、「裏金議員より悪質なのか」という問いは、いかにも数々の雑誌の編集長を務めた元木氏らしい視点だ。テレビ局の情報番組でディレクターを務めている幹部や、各局のメインキャスターに直接聞いてみたい気がする。元木氏は指摘する。「県議会議員はほとんどが『辞めろコール』を合唱している。新聞、テレビ、週刊誌も連日のように『斉藤が県政を混乱させた、辞めるべきだ』と報じている」と。まるで味方は1人もいないかのようだ。

斉藤氏は2021年に20年続いていた井戸敏三知事が退任したのを機に、日本維新の会と自民党の推薦を受けて県知事選に出馬し初当選した。当時の県庁内には、井戸県政による「ひずみ」への不満が漂い、「リスクを冒さない行政手法。硬直化した人事。時間がかかりすぎる内部手続き――。ある管理職の男性は『ひずみ』をこう表現する。斎藤知事らがそれらを変えようとしている姿勢に『共感していた』と振り返る」(朝日新聞9月7日付)。その庁内の雰囲気が一変する。井戸前知事が推進していた新庁舎の建て替えを斉藤氏が白紙に戻したからだ。斉藤氏は井戸前知事の県政を厳しく改革しようとしていたようだ。噂や又聞きの類の“おねだり疑惑”など、内部通報と称した斉藤攻撃には、前知事の“ぬるま湯”行政への懐古趣味的な色合いはないのか。元木氏の原稿は長い。ここに記したのはほんのさわりの一部にすぎない。興味のある人は直接本文を見てほしい。ここにきてメディアの論調が少し変わりつつあるように見えるのだが・・・。