立憲民主党の代表に野田佳彦氏が選出された。民主党時代に首相を務めた経験のあるベテラン。野田氏といえば令和4年10月に衆院本会議で行った安倍元首相の追悼演説が評判になった。産経新聞はこの演説に盛り込まれた安倍氏の言葉を紹介している。曰く「自分は5年で返り咲きました。あなたにも、いずれそういう日がやってきますよ」。代表に選出されたあと同氏は来るべき総選挙への抱負を口にした。「本気で政権をとりにいく」と。その意気やよし。野党第1党の党首はそうでなければならない。期待したいと思う。と同時に気になる点もある。何よりもまず党内をまとめられるのか。野田氏には首相時代の平成24年12月に衆議院の解散を断行、大敗を喫して民主党を下野させたという過去がある。産経新聞によると同党議員の中には今でも「絶対許せない」と、不信感を口にする人がいるという。
求心力を発揮して党内を一本にまとめられなければ、いつもの通り執行部批判が吹き荒れるだろう。そうなれば「政権奪取」どころではない。政権を取るためには野党の一本化も必要だ。維新を筆頭に国民民主党、れいわ新撰組、社民党、N党、参政党、日本共産党まで野党は多士済済。政策も似ているようで似ていない。政権を取るためには多党化している野党の一本化が必須だ。蓮舫氏を押し立てた都知事選では共産党との関係が前に出過ぎて失敗した。共産党を含めるのか含めないのか、この一点で同根である国民民主党との連携も難しくなる。野党連立による細川政権の誕生は、小沢一郎という剛腕政治家に負うところが大きい。今回小沢氏は積年の恩讐を乗り越えて野田氏を支持している。小沢氏に頼れば頼るほど、これに反発する勢力もいるだろう。呉越同舟の舵取りは想像以上に難しい。
もう一つ個人的に気になっているのが財務省との関係だ。野田氏は平成24年に民主、自民、公明3党による「3党合意」を取りまとめている。これは「社会保障・税一体改革に関する合意」と言われるもので、社会保障の財源として消費税率を引き上げることを目指したものだ。取りまとめにあたって裏で財務省が動いたと言われている。野田氏は財務大臣も経験している。いってみれば親財務省人脈に連なる政治家でもある。3%だった消費税率はこれを契機に5%、8%、10%と段階的に引き上げられた。これが日本経済のデフレを加速させた元凶でもある。政権獲得後の財政運営をどうするのか、個人的にはものすごく気になっている。代表選挙では政治改革を1丁目1番地の課題に挙げており、財政運営については多くを語っていない。だが、政権奪取に向けて避けて通れない課題でもある。「減税も・・・」との発言はあったが、消費税はこの先どうするのだろう・・・。