吉田昂、谷口崇子、鈴木英樹

  • スーパー事業中心に売却検討でPE投資会社などに初期段階の打診
  • 4月のIPO案に比べ、早期に株主に利益をもたらす可能性示す

セブン&アイ・ホールディングス(HD)がイトーヨーカ堂など傘下の多数企業の一部株式売却の検討に乗り出したことが、複数の関係者への取材で分かった。

  関係者によると、イトーヨーカ堂やヨークベニマルなどスーパー事業を中心に一部株式売却について、プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社などに初期段階の打診をしたという。

  7&iHDの広報担当者は当社から発表したものではなく、現時点で決定している事実はないとコメントした。

  7&iHDはマイノリティー株主として残るが、具体的な持ち分は決まっていない。関係者の1人によると評価額はEBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益)の6-8倍になる。

  24年2月期のスーパー事業のEBITDA(537億円)で試算した場合、3200億円-4300億円規模となる。スーパー事業以外を含めれば、さらに規模が大きくなる可能性がある。売却検討は初期段階にあるため、今後取りやめる可能性もある。

  7&iHDは、イトーヨーカ堂を中心としたスーパー事業の新規株式公開(IPO)に向けた検討を始めると4月に発表していたが、同案の実現には数年かかるとされていた。事業売却に向けた今回の動きは、より早期に株主に利益をもたらし得る選択肢を提示することになる。

  カナダのアリマンタシォン・クシュタールから8月に買収提案を受けたことで、7&iHDに対して企業価値向上策の提示を求める外圧が強まっていた。

  スーパー事業の24年2月期の営業利益は135億円と、海外コンビニ事業の3016億円や国内コンビニ事業の2505億円を大きく下回る水準だった。7&iHDの有価証券報告書によると、スーパー事業は16社の連結子会社と4社の関連会社で構成されている。

  JPモルガン証券の村田大郎アナリストは8月19日付のリポートで、スーパー事業の事業価値は2324億円と試算していた。

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