セブン&アイ・ホールディングス(HD)に買収提案しているカナダのアリマンタシォン・クシュタールの経営トップが今週来日し、17日に都内でブルームバーグなどとのインタビューに応じた。買収額を7兆円規模に引き上げた巨額案件を成功につなげるため、日本のステークホルダーとの関係構築を進めているという。

  取材に対応したのは創業者でもあるアレイン・ブシャード会長とアレックス・ミラー社長最高経営責任者(CEO)、フィリペ・ダ・シルバ最高財務責任者(CFO)、顧問で前CEOのブライアン・ハナッシュ氏の4人。クシュタールはメディアのインタビューをあまり受けないことで知られており、今回の来日は過去20年間で3度目となる7&iHD買収成功にかける本気度を示している。

一問一答は以下の通り。

-7&iに興味を持った理由は?

ブシャード会長:「私たちは自分たちのことを知ってもらうために日本に来た。私たちのことを知らない人が多く、当然だがまず自己紹介をしたいと思っている」

「日本では日本の事業がどうなるのか、またそれをどのように運営していくのかという疑問の声を聞いた。 それに対する答えは簡単で、人を動かすということはしない。ビジネスモデルも変更せず、われわれの方が適応するということだ。 買収した店舗から優れたやり方を吸収したり、それをわれわれのやり方と融合させるとより良いものができる」

「日本に来たのは複数のステークホルダーとの関係構築のためだ。今のところその試みは7&iの経営陣との間を除けば非常にうまくいっている。彼らと会議の場を持とうとしたができなかった。ただ、いずれは実現するだろう。日本の文化についてより深く理解したいと思っているが、現状で重要なのは日本側の懸念事項を把握することだ」

「私は日本に何度も来ている。セブン-イレブンの店舗を訪れるのは初めてではないが、素晴らしい。品ぞろえの数は驚異的で価格設定も優れている」

(ブシャード氏は、今回の来日でたこの総菜とすしを買ったと明かした。交渉が可能だと考えているかとの質問に対しては次のように述べた。「可能だと思う。理にかなっていて株主もそれを求めている」)

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取材に応じたブシャード会長(右)らクシュタール幹部Source: Alimentation Couche-Tard Inc.

-7&i買収に賭けるビジョンはどのようなものか?

ミラー氏:「20年間、この案件を検討してきた。それは、7&iに対して深い敬意を抱いているからだ。彼らは誰もが知るブランドを持っている。われわれはトップシェアを持つ会社を買うことを好む。7&iは日本で成功を収めている」

「当社が掲げるビジョンは、モビリティと利便性の提供という分野で世界のトップランナーになることだ。2社を統合することは、その実現に向けた大きな一歩となる。 セブン-イレブンのブランドは象徴的なものだ。われわれがそれを成長させていくことに疑問の余地はない」

-もしまた拒否されたらどうするか

ミラー氏:「私たちが考えているのは交渉を続けることだけで、それに必要なことであれば何でもやる。現在提示している提案内容はすべての利害関係者にとって非常に魅力的なものであると考えている」

-株式公開買い付け(TOB)の検討は

ハナッシュ氏:「われわれとしては、すべての人にとって非常に魅力的な買収提案をベースに7&iの取締役会や経営陣と建設的な態度で関わることに集中する考えだ」

-7&iの事業の一部だけを買収する考えはあるか

ミラー氏:「7&i全体に注目している。日本の市場に非常に大きな価値があると考えている」

-米規制当局の懸念にはどのように対応するか

ブシャード氏:「北米で連邦取引委員会(FTC)の存在が買収の妨げになる可能性があるという意見については承知している。それに対する答えはある。これまで74件の買収を行ってきた中で、FTCとの話し合いを数多く経験したが、常によい解決策を見いだすことができた」

(規制当局との予備的な話し合いがあったかを尋ねられたミラー氏は、「もちろん、ある。繰り返しになるが、われわれはFTCとの協議にとても慣れていてすでにその作業を済ませている。FTCとの協議において、解決策を見出すことができると信じている」と述べた)

-必要な資金調達は確保しているか?

シルバ氏:「資金調達に関しては、当社には合併や買収の分野で強固な実績がある。すでにシンジケート組成に関して非常に強力な支援を受けている。実現すれば資金調達が可能になり、同時に高い信用格付けも維持できると確信している」

「シンジケートには日本の銀行が参加している。大手3行の一角であり、以前からのパートナーだ」

(クシュタールが他の株主に声をかけているかや、資金調達の方法などについて尋ねられたシルバ氏は、協議は行われているとし、「銀行だけでなく、戦略的パートナーからも資金調達と支援が得られると確信している」と述べた)

-7&i創業家の伊藤家と提携する考えは

ブシャード氏:「彼らとは関係を持つ計画だ。歴史を振り返ると、われわれには多くの共通点がある」

-7&iの再編計画についてどう評価するか

ミラー氏:「われわれの提案の方がより大きな価値とリスクに見合う確実性を提供できると信じている」

-7&iが外為法上の「コア事業」に分類されたことが障害になる可能性は

ミラー氏:「最終的に買収の実現を妨げるものだとはとらえていない」

-買収交渉から撤退する可能性は?

ミラー氏:「これまでに実現した買収の数より多くの案件を断念してきている。私たちは非常に明確な戦略を展開しており、それは今回も同様だ」

「今回の買収提案が株主を含むすべての利害関係者に価値がもたらされると信じている。株主価値を毀損(きそん)することはない。株主価値やその他の価値を毀損すると判断した場合は、その時点で撤退するがそれ以外の場合には取り組みを続ける。最終的にこの取引を実現するために必要なことをすべて行うというのがわれわれの意図だ」