毎日新聞は衆院選の全候補者1344人に対し、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件や防衛増税などへの考えを尋ねるアンケートを実施した。裏金事件の真相解明の必要性について、全候補者の76%が「真相解明を進めるべきだ」と回答した一方、自民に限ると48%にとどまり、無回答も26%あった。野党だけでなく連立与党の公明党でも真相解明を求める回答が大半を占め、自民の後ろ向きな姿勢が浮き彫りとなった。
1994年に与野党が廃止方針で合意していた企業・団体献金についても自民は77%が「廃止は必要ない」と回答し、他党に比べ突出している。
裏金事件を巡っては旧安倍派などの元会計責任者らが有罪判決を受けたものの、ノルマ超過分のキックバック(還流)や政治資金収支報告書への不記載がいつどのように始まったかは明確になっていない。自民は党内調査で裏金の違法な使用はなかったと結論づけ、検察による捜査も終結しているとして、石破茂首相も現時点での再調査は必要ないとの立場だ。不記載を理由に非公認とした候補を、選挙後に追加公認する可能性に触れている。
アンケートでは、自民の15%が「真相解明を進める必要はない」と答え、主要政党では最も多かった。
ただ、秘書が香典を配って公職選挙法違反などの罪で有罪が確定した旧安倍派の元衆院議員が裏金を原資にしていた疑いや、唯一存続を決めた麻生派でも2017年以前に裏金作りをしていた疑いが浮上し、野党は再調査を求めている。立憲民主党の野田佳彦代表は「裏金隠し解散」と繰り返し指摘し、最大の争点だと訴えている。
アンケートでも、立憲民主党の93%、日本維新の会の98%、共産党の98%、国民民主党の93%が「真相解明が必要」と回答した。
与党の公明も、裏金問題で自民から公認を得られなかった候補にも推薦を出しつつ、アンケートでは「真相解明が必要」との回答が84%に及んだ。孤立化が進む自民は衆院選後の国会でも対応に迫られそうだ。
営利を目的とする企業によって政策がゆがめられるとして、長年議論されてきた企業・団体献金については、「廃止すべきだ」が全候補者の60%、「廃止する必要はない」が25%だった。
94年の政治改革で与野党は将来的な廃止方針で合意したが、政党だけでなく、代表の政治家と一体になっている実態が指摘される政党支部への献金も認められ、「抜け道」と批判されてきた。6月に成立した改正政治資金規正法でも、企業・団体献金のあり方は盛り込まれなかった。
首相は廃止に否定的だ。自民で「廃止すべきだ」と答えたのは4%だった一方、立憲は89%を占め、与野党の違いが鮮明となった。
アンケートは首相が衆院解散を表明した後の4日から配布を始めた。回収率は90・6%。【池田直】
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