▽自民非公認候補「選挙に使うなと指示あったのに」 活動費、党勢拡大向けも野党の攻撃材料に<産経ニュース>2024/10/25 09:32
自民党が衆院選(27日投開票)で非公認とした前議員が代表を務める政党支部に対し、政党交付金から「活動費」名目で2000万円を支出したことが波紋を広げている。野党は「偽装非公認だ」などと厳しく批判するが、自民は党勢拡大の目的で支出したものとして「(非公認候補の)選挙に使うことはまったくない」(石破茂首相)と反論する。実際、非公認の候補は、交付金に一切手を付けなかったり、支出そのものを知らなかったりしたケースが目立っている。ただ、交付金を選挙期間中に非公認候補が関係する政党支部に支出したことは有権者の誤解を招きかねず、党執行部の認識の甘さも指摘されている。
目的は「党勢拡大」
政党助成法上、政党本部から支部に支出された政党交付金について、使い道に制限はない。しかし、支出は政治資金収支報告書で、項目を細かく分けて報告する決まりになっている。今回は、「政治活動費」という分類基準の中で定められている「選挙関係費」と「組織活動費」のどちらに該当するかが問題となる。
総務省の資料によると、選挙関係費は「選挙に関して支出される経費」と位置づけられ、例として「公認推薦料」や「陣中見舞い」など「選挙に関して行われる政治活動に要する経費」と定められている。
一方、組織活動費は選挙関係を除く「政党(支部)の組織活動に要する経費」と定義。例として「大会費」「行事費」「組織対策費」「渉外費」などが挙げられている。
自民は今回、非公認候補が所属する政党支部に対しては、公認料を含まない「活動費」として支出したとする。10月13日に該当する支部向けに森山裕幹事長名で出した「支部政党交付金支給通知書」には、「貴支部における党勢拡大のため活動費として、ご活用くださいますようお願い申し上げます」と記している。
党側は、こう太字で強調した「党勢拡大」に使う具体例について、小選挙区内の比例代表票の掘り起こしや党の政策のPRなどを挙げている。
これに対し、公認された候補の政党支部には「公認料」として500万円、「活動費」として1500万円を支給した旨通知している。この公認料は「選挙関係費」にあたり、例えば臨時に設けた選挙事務所の家賃などに使うこともできるという仕分けだ。
これらを踏まえ、自民は「非公認となった支部長が無所属候補として立候補した場合は、自身の選挙運動のためにこの交付金を使うことはできない」と強調。実際、公認されなかった無所属の前職は産経新聞などの取材に、党支部に振り込まれた2000万円について、「選挙に使うなという指示があったので、一切使っていない。選挙が終了するまで一円たりとも手をつけないということだ」と語った。
首相「憤り覚える」というが
「このような時期に、そのような報道が出ることは誠にもって憤りを覚える」
石破茂首相は24日の街頭演説で、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が「裏金非公認に2000万円」などと報じたことを念頭にこう批判。「そのような報道、そのような偏った見方に負けるわけにはいかない」とも語った。
赤旗は23日、自民党が非公認とした候補者が代表を務める党支部に対して、公示直後に政党助成金2000万円を振り込んだと報じ、「裏金づくりという組織的犯罪に無反省な自民党の姿が浮き彫りとなっている」と批判した。24日付紙面では「事実上の裏公認であり、有権者をだました形だ」と指摘している。これに便乗する形で、立憲民主党の野田佳彦代表も「事実上の公認だ。(自民は)まったく反省していない」と厳しく指摘した。
今回公認が見送られて無所属で立候補した10人は、公認候補に比べて1000枚まで貼れる政党用ポスターが掲示できなかったり、政見放送に出演できなかったりハンデを抱える。非公認では党支持団体の支援などに頼ることが難しい事情もある。比例代表への重複立候補も認められない。
ただ、衆院選は「政治とカネ」の問題が争点の一つになっている。選挙活動費と誤解されかねない活動費を選挙期間中に支出し、野党に攻撃材料を与えること自体、危機管理上疑問視される面がある。(奥原慎平)
▽与党過半数の攻防、自民苦戦し小選挙区130超で接戦・立民大幅増へ・国民も躍進…読売終盤情勢調査<読売新聞オンライン>2024/10/24 22:00
読売新聞社は、27日投開票の衆院選の終盤情勢を探るため、22~24日に世論調査を行った。選挙戦は、定数465のうち与党の過半数(233議席)確保を巡る激しい攻防となっている。自民党は政治資金問題を受けて苦戦する一方、立憲民主党が議席を大幅に増やすほか、国民民主党も躍進する情勢だ。日本維新の会は勢いが停滞している。
終盤情勢の分析は、調査結果に全国の総支局などの取材を加味した。
全国289小選挙区の情勢を分析すると、自民候補が追い上げられている選挙区が目立つ。自民候補266人のうち、優位な戦いを進めるのは序盤段階の102人から87人に減少。接戦となっている候補が118人から133人に増えた。比例選の獲得議席は、2021年前回選の72から50台にまで減らす可能性がある。公示前の247議席の維持や単独での過半数獲得は見通せなくなっている。
政治資金問題に関連した自民前議員ら44人は、半数以上が小選挙区選で後れを取っている。
公明党は、小選挙区候補11人のうち優勢なのは序盤の2人から変わらず、石井代表(埼玉14区)を含め大半が接戦を演じる。比例選でも、前回選並みの議席獲得は微妙な情勢だ。
立民は、序盤の勢いを加速させている。劣勢の候補が序盤の73人から56人に減る代わりに、接戦を繰り広げる候補が101人から116人に拡大。混戦から抜け出して先行する候補もおり、東北や首都圏を中心に優位な候補は33人から35人に増えた。比例選では40議席台後半をうかがい、党全体で公示前98議席から大きく積み増す見通しだ。
国民も、3人が優位に立つほか、序盤で劣勢だった33人のうち5人が接戦にまで盛り返している。比例選も前回選の5議席からの倍増を視野に入れる勢いで、公示前の7議席を上回るのは確実な情勢だ。
維新は、優位に戦いを進めるのが関西の選挙区の7人にとどまり、序盤の9人から後退。比例選でも前回選の25議席から減らす公算が大きい。公示前44議席の維持は不透明感を増している。
共産党は比例選で議席を増やす勢いだ。れいわ新選組、社民党、参政党、諸派の日本保守党も議席を確保しそうだ。
調査は電話とインターネットで実施し、計24万7576人から回答を得た。一定数の回答者が投票先を挙げておらず、情勢は流動的な要素もある。衆院選には、小選挙区選(定数289)に1113人、比例選(同176)に231人(重複立候補を除く)の計1344人が立候補している。
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