大統領選挙に圧勝したトランプ次期大統領の政権づくりがすでにはじまっている。まずは閣僚指名。連日、確定した閣僚名簿や予想、推測がメディアで報道されている。第1次政権時に混乱した政権内部の不統一を避けるかのように、発表される閣僚は親トランプ派が大半。驚くのは国防長官に就任するピート・へグセス氏の指名だ。保守系FOXニュース司会者。ロイターによると「元陸軍州兵で、アフガニスタンやイラク、キューバのグアンタナモ米海軍基地で任務経験がある」と紹介されている。元軍人だが政治経験も行政経験もない。「NATOに懐疑的」、「国防総省幹部による政策を『(社会正義に目覚めた)ウォーク(左翼)』」と批判している。この人事が発表された同じ日にW S Jは政権移行チームが「米軍幹部の解任を勧告する委員会を設立する大統領令を検討している」と報じている。標的は「米軍制服組トップのブラウン統合参謀本部議長の可能性がある」ようだ。

ブルームバーグ(Bb)によると下院軍事委員会の民主党トップであるアダム・スミス議員は声明で、「国防長官がエントリーレベルの役職となるべきではない」と指摘。「トランプ次期大統領がこの極めて重要な役割を、ニュース番組の司会者に委ねることに疑問を感じる」と述べたと伝えている。ニューヨーク・タイムズはヘグセス氏の指名を「型破り」(読売新聞)と批判している。国防長官の役割は極めて重要だ。N A T Oや中東情勢、対中国やウクライナ支援、東南アジア、日韓の安全保障に直接関わってくる。そのトップとなる長官人事に世界中が唖然とし、驚いている。トランプ氏は何を目指しているのか。この人事が実現すれば「世界最強の軍隊はここ数十年で最も経験の浅い指導者の手に委ねられることになる」(Bb)と憂慮する声が強い。閣僚人事を承認する米議会上院はすでに共和党が過半数を制している。余談だが下院も同党が制したようだ。新国防長官人事は間違いなく承認される。

もう一つ気になる人事はイーロン・マスク氏の処遇だ。主要メディアによると同氏は新設される「政府効率化省」の共同トップに就任する。この組織は何をやるのだろうか。トランプ氏は声明で「官僚主義を解体して過剰な規制と無駄な支出を削減し、連邦政府を再編する道筋を切り開く」と強調している。司法省やF B I、C I Aといった組織は民主党の支持者が多いと言われている。これに金融業界と軍事産業が連動したD S(ディープ・ステート)が、実質的に米国を支配しているとの説もある。陰謀論との見方もあるが、トランプ氏は選挙中からD S排除を公言している。民主党寄りの米国主要メディアはトランプ人事を「異様」と表現する。そういう人たちの足元で官僚組織は肥大化し、ポリコレに特化した焼け太りが蔓延している。トランプ人事は「革命」かもしれない。とすれば革命には必ず反革命がつきまとう。軍部によるクーデターも起こりかねない。トランプ政治はこの先、より激しくなりそうな気がする。