注目の兵庫県知事選で斉藤元彦前知事が再戦を果たした。おねだり、パワハラ疑惑で県議会が与野党含め全会派の賛成で解任決議案が成立、斉藤前知事は議会を解散せず知事選挙を選んで再選出馬した。この問題をめぐって過去に2回(9月11日付、同20日付)この欄で取り上げてきた。経緯は省略するが斉藤前知事の再選は当然だと思う。今回の知事選の特徴は既得権益者対若者プラス民意と言っていいだろう。メディアと既得権が融合した斉藤前知事の疑惑デッチあげに、若者を中心とした民意がS N Sを通じて反旗を翻したのだ。この構造は兵庫県だけではない。総選挙で示された国民民主党の公約(103万円の壁撤廃)を支持する民意の前に立ちはだかる財務省と総務省という構造に通じる。もちろん財務省と総務省は旧態依然とした既得権益者の代表である。103万円の壁は既得権益者に守られているのである。こちらの壁の撤廃に向けた勝利の道筋は依然として見えていない。
兵庫県知事選と103万円の壁の共通点は何か。それを象徴するのが兵庫県内の29市で構成する「市長会」だ。このうちの22市の市長が選挙戦の終盤に尼崎市長を3期12年務めた稲村和美氏の支持を打ち出したのだ。「県政混乱の責任は斉藤氏にある」というのが稲村氏支持の理由だが、県政の混乱を招いたのは斉藤氏だけだろうか。「みみっちいおねだりを頻繁に行っていた」と連日のように報道したのは、斉藤批判を繰り広げる反対派と融合したメディアではなかったのか。事実確認もしないまま連日おねだり、パワハラ疑惑と報道すれば県政は混乱するだろう。県議会も百条委員会の結論が出る前に斉藤知事の不信任決議案を全会派の賛成で可決した。まるで北朝鮮や中国、ロシアなど独裁国家の議会採決のようだ。すべての責任を斉藤氏に押し付けている。誰一人斉藤氏の解任に反対する人がいない。こちらの方が個人的には空恐ろしい気がする。
その斉藤氏に寄り添ったのがS N Sと若者だ。もちろんS N Sは玉石混交だ。嘘もあればフェイクもある。そんな中で多くの若者はフェイクに近い斉藤疑惑の実態に近づいていく。選挙だから現場ではあることないこと、さまざまな戦いがあったのだろう。それでも最終的な民意には13万票の差がついた。斉藤氏の当選は既得権益者の敗戦を意味する。翻って先の総選挙。国民民主党が掲げた「手取りを増やす政策」を大半の民意は支持している。それを阻止すべく財務省と総務省が水面下で動いている。総務省と22市長は連携しているのかもしれない。7兆円〜8兆円の税収減を主張する財務省は斉藤疑惑をデッチあげたように、メディアと連携して民意を葬り去ろうとしているのかのようだ。問題は税制と年金など社会保障を含めた国民負担をどうやって減らしていくかだ。制度全体の見直しは簡単ではない。時間がかかる。再戦を果たした斉藤知事の先行きも平坦ではない。議会には相変わらず既得権益者がのさばっている。