9日の米国株式市場では、主要株価3指数がそろって下落。米金利の先行きを見極めようと、インフレ指標の発表に注目が集まっている。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 6052.85 | -37.42 | -0.61% |
ダウ工業株30種平均 | 44401.93 | -240.59 | -0.54% |
ナスダック総合指数 | 19736.69 | -123.08 | -0.62% |
連日の最高値更新で買われ過ぎの領域に近づいていたS&P500種は、この日0.6%下落。中国が独占禁止法違反の疑いで調査を開始したと伝わったエヌビディアが売られた。ナスダック100指数は0.8%、ダウ30種平均は0.5%それぞれ値下がり。
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一方、中国共産党指導部が2025年に金融緩和と財政支出の拡大を進める方針を示したことを好感し、米国市場に上場する中国企業の米国預託証券(ADR)は大幅高となった。
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11日発表の米消費者物価指数(CPI)を含むデータは、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合を前に米金融当局者が物価動向に関して確認できる最後の材料となる。インフレ抑制における進展停滞の兆候が見られれば、3会合連続利下げの可能性は低下するかもしれない。
フリーダム・キャピタル・マーケッツのジェイ・ウッズ氏は「米金融当局の次の動きを占う上で、11日発表のCPI統計が鍵を握っているかもしれない」と指摘。「これまでのところはエコノミストの予想に沿っており、市場を動揺させる内容ではなかった。しかし、今回データが上振れすれば米金融当局は警戒し、追加利下げを見送る可能性もある」と述べた。
半面、モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏は、CPIが劇的に上昇しない限り、12月の利下げを妨げることはないと予想している。
「CPIを含むインフレ指標をみると、ここ数カ月間に進展が停滞している」と指摘するのは、バンクレートのグレッグ・マクブライド氏だ。「今回の統計では、インフレ圧力再燃の兆しが出ているか、あるいはさらなる改善の兆候がみられるか、厳しく精査されるだろう」と同氏は述べ、「インフレ率は2022年につけたピークの9%からは大幅に落ち着いてきたが、依然として目標の2%を大きく上回ったままだ」と続けた。
ブルームバーグのエコノミスト調査によると、11月のコアCPI(変動の大きい食品・エネルギー除く)は、4カ月連続で前月比の上昇率が0.3%になると予想されている。前年比の上昇率は3カ月連続で3.3%となる見通し。
オッペンハイマー・アセット・マネジメントは、好調な米経済を背景に記録的な上昇が続き、S&P500種は来年末までに7100に到達するとの見方を示した。
チーフ投資ストラテジストのジョン・ストルツファス氏は、ファンダメンタルズは「現在の経済と株式市場の回復力が来年も継続することを示唆している」とリポートに記した。
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米国債
米国債相場は下落。米10年債利回りは4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇し、4.2%に接近した。終盤の取引で、利回りはこの日の高水準近辺で推移しており、利回り曲線はスティープ化した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.38% | 4.8 | 1.11% |
米10年債利回り | 4.20% | 4.4 | 1.07% |
米2年債利回り | 4.13% | 2.3 | 0.55% |
米東部時間 | 16時43分 |
中国の刺激策強化を好感した原油高が重しとなったほか、10日に始まる一連の国債入札に備えた動きが出た。
為替
ニューヨーク外国為替市場では、中国が景気刺激策の強化を示唆したことでリスク選好ムードが高まり、オーストラリア・ドルやニュージーランド・ドル、ノルウェー・クローネなど資源国通貨が買われる一方、安全資産とされる通貨は売られた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1280.69 | 1.84 | 0.14% |
ドル/円 | ¥151.21 | ¥1.21 | 0.81% |
ユーロ/ドル | $1.0551 | -$0.0017 | -0.16% |
米東部時間 | 16時43分 |
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時、約0.2%低下したが、その後は小幅高まで持ち直した。
ジェフリーズの為替ストラテジスト、ブラッド・ベクテル氏は「中国の刺激策はどれも非常に漸進的で、かつ国内に焦点を絞ったものであり、中国経済を支援してきたが世界経済全般を押し上げるものではなかった」と指摘。このニュースを受けて「コモディティー(商品)全般に買いが入っている」が、「十分な措置を講じているのかは、まだ定かではない」と述べた。
円は対ドルで151円台前半に下落。米国時間に入り、じりじり下げを広げる展開となった。円は主要通貨の中で、対ドルのパフォーマンスが最も悪かった。
ノムラ・インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏(ロンドン在勤)は日銀による12月利上げの可能性を巡る多くの報道により、短期のドル・円のボラティリティーは依然として高い水準にあるとリポートで指摘。日銀が最近行った情報発信については、12月に利上げを見送ったとしても近い将来に政策金利を0.50%に引き上げることに大きな障害があるわけではない、というのがメッセージの核心とノムラでは考えているという。
三菱UFJ信託銀行のトレーダー、横田裕矢氏は日銀による12月の利上げ観測が後退しているようだと指摘。日銀の金融政策会合はFOMC結果発表の翌日に予定されているため、米国の利下げ直後に日本が利上げを行うのは難しいだろうとの見方を示した。
原油
ニューヨーク原油先物は反発。中国の指導部が2025年に金融緩和と財政支出の拡大を進める方針を示したことから、買いが優勢になった。市場は中東情勢にも注目している。
習近平総書記(国家主席)をトップとする中央政治局は来年の金融政策を「適度に緩和的」とすると発表。11年以来の大幅なスタンス変更となる。これまでは「穏健な」金融政策としていた。中国の金融緩和姿勢は原油需要見通しを改善させたが、トレーダーは上昇余地について慎重な見方を崩していない。
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DWSグループの商品責任者兼ポートフォリオマネジャーのダーウェイ・クン氏は「中国経済が回復するには、多くのことを要する」と指摘。「これまでに発表された文言は、前向きなステップとなる可能性を示唆する」としつつ、「慎重な見方」を維持していると述べた。
市場ではシリアのアサド政権崩壊も注目された。さらなる混乱をもたらす可能性がある。
この日の原油価格上昇は、10月半ばから続くバレル当たり約6ドルの取引レンジから抜け出すには十分ではなかった。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物1月限は、前営業日比1.17ドル(1.7%)高の1バレル=68.37ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は1.4%上げて72.14ドルで引けた。
金
ニューヨーク金相場は続伸。スポット価格は2週間ぶりの高値を付けた。中国人民銀行(中央銀行)が7カ月ぶりに金の備蓄を拡大したことが買い材料になったほか、中東を巡る懸念で逃避需要も高まった。
スポット価格は一時1.6%高。中国人民銀は半年間停止していた金購入を再開し、11月に16万トロイオンス購入したと7日に明らかにした。同中銀は2022年終盤以降、金の主要な買い手となってきた。
人民銀の購入再開は、金が最高値付近で推移する中でも、同中銀が準備資産の多様化と通貨安警戒に依然注力していることを示している。ただし、購入規模は約5トンと、今年の月間購入量に比べると相対的に小さい。
同中銀が発表する購入規模の正確性についても、市場は懐疑的に受け止める傾向がある。
ストーンXグループの市場分析責任者、ローナ・オコネル氏は「私は中国の『購入停止』をうのみにしていない」と語る。「同中銀は購入ゼロを報告した後、保有量の大幅増加を公表することで知られている」と述べた。
中東ではシリアのアサド政権が崩壊し、地域の不安定化が進んだ。米軍は8日、シリア中部で過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の標的数十カ所を空爆。バイデン米大統領はシリアのアサド政権崩壊がイスラム過激派に復活の扉を開く可能性があると警告した。
ANZグループ・ホールディングスは「シリア政府崩壊は逃避需要のフローにつながる可能性がある」と指摘。「11月の米非農業部門雇用者数は米国でリバランスの動きが続いていることを確認するものだ。これは米金融緩和バイアスを引き続き裏付けるだろう」と付け加えた。
スポット価格はニューヨーク時間午後3時4分現在、前営業日比25.25ドル高の1オンス=2658.62ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物2月限は26.20ドル(1%)上昇し、2685.80ドルで引けた。
原題:Stocks Halt Rally at Start of Key Inflation Week: Markets Wrap
Treasuries Fall as Oil Rebounds and Long-Maturity Auctions Loom
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