Olivia Tam
- 消費と投資の押し上げを優先へ、具体策の詳細乏しく
- 利下げと預金準備預率引き下げ「適切な時期に」実施
中国は2025年に借り入れと支出を増やす方針を示し、政策の焦点を消費へとシフトする姿勢を鮮明にした。トランプ次期米政権による関税引き上げが予想される中、成長てこ入れに向けた刺激策を強化する。
習近平国家主席をはじめとする共産党幹部は、来年の政策優先事項を定める「中央経済工作会議」の閉幕後、国内総生産(GDP)に対する財政赤字の比率を来年引き上げる方針を表明した。中国国営中央テレビ(CCTV)が伝えた。
また利下げや預金準備率の引き下げを「適切な時期」に行うとした。
CCTVによると、中国は「消費の大幅な拡大」を来年の最優先事項とし、内需全体の刺激を目指す他の目標にも言及した。
マッコーリーの中国経済担当責任者、胡偉俊氏は、会議のトーンは成長を強く支持するものだが、消費押し上げの具体策に欠けると指摘。「政府が消費者に直接、現金を支給するとは思わない」とした。その上で「むしろ政府が借り入れを拡大し、公共支出を増やすことで、需要全体を押し上げる。それが大きな戦略だ」と述べた。
発表を受けて、中国株価指数先物は下落した。
会議で使用された文言は、財政赤字比率など具体的な政策手段に言及するなど、これまでになく直接的で、今週初めに政治局会議で掲げられた刺激策強化の方針を裏付けた。
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さらに「来年も経済成長を維持し、雇用と物価の全体的な安定を確保する必要がある」とし、間接的ながら、長引くデフレ圧力を暗に認める異例の言及があった。
ジョーンズラングラサールの大中華圏担当チーフエコノミスト、龐溟氏は「共産党幹部は25年について、消費と投資の拡大を優先しており、24年のコミュニケで中心だった産業の高度化とイノベーションから焦点を移している」と指摘。「当局による方針転換は、国外の不確実性をうまく乗り切るため、内需の強化が急務になっていることを浮き彫りにする」と述べた。
消費押し上げに向けた具体策の詳細は示されなかった。個人消費を刺激するための「特別キャンペーン」を計画中としたが、それ以上の説明はなかった。家電など消費財の下取り政策を拡充する方針も表明したが、これについては、多くのエコノミストが効果の持続性を疑問視している。
また中国は来年、超長期特別国債と地方特別債の発行も増やす予定だ。これらは、インフラ投資やその他の公共支出の重要な財源となる。
会議では、金融緩和策がいつ実施されるかについての具体的な説明はなかった。 また人民元を「基本的に安定」維持するとの従来の方針を改めて表明した。中国人民銀行(中央銀行)が金融緩和を実施する一方で、通貨安の進行を抑制する取り組みを行う可能性を示唆した。
エコノミストは、銀行が融資や投資に回せる資金を増やすための預金準備率引き下げが年内に行われると予想している。 次の利下げの時期は総じて、来年序盤とみられている。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の大中華圏チーフエコノミスト、楊宇霆氏は「すべての政策措置は、われわれの以前の予想に沿ったものだ。問題は、どの程度の規模になるかだ」と述べた。
成長目標や政府予算などの詳細は、来年3月の全国人民代表大会(全人代)で明らかになる見通し。
原題:China Vows Bigger Fiscal Spending to Boost Consumption Next Year(抜粋)