「103万円の壁」見直しに向けて財源論が焦点になってきた。財源論は基本的に財政に関するすべての情報を持っている政府の責任だと思う。国民民主党が主張する「財源は政府が考えるのが筋」との主張、これは当たり前のことだ。野党に財源の提示を要求するなら財政に関するすべての情報を開示すべきだろう。それはともかくとして、国民民主党の古川元久代表代行はテレビ番組の中で、財源として「地価税」の導入を与党に提案したと語っている。政府・与党の要求に応えているわけで、あとは政府が責任を持って「178万円を目指す」、これが3党合意のあるべき姿だろう。とはいえ、本当に財源はないのか。ど素人ながら色々資料を漁ってみた。ターゲットは財務省のホームページ。様々な資料が山ほど出てくる。これを持って財務省は「あらゆる情報を提供している」と主張するだろう。それに反論できない素人の悲しさ。でも正しいかどうかどうかは別にして、考えることぐらいはできる。財源はあるのかないのか、無謀な挑戦を試みた。
一つの資料に注目した。「一般会計税収の予算額と決算額の推移」という表だ。昭和60年(1985年)から令和6年(2024年)までの一覧表だ。令和5年と6年は一部空白。期間を「失われた30年」とすると、令和4年年(2022年)の30年前は平成5年(1993年)になる。この間に決算が黒字になったのは19回、赤字は11回。黒字の回数が赤字を大幅に上回っている。ちなみにこの数字は補正予算による歳出と歳入を修正した後の数字だ。今年度もそうだが政府は毎年年末に、巨額の歳出を伴う補正予算を組んでいる。それでも黒字回数が圧倒的に多いということは、財政にゆとりがあるということだ。この黒字分がどのように処理されたのか不勉強でよくわからない。恐らく国債の償還をした上で残った分は翌年度に繰り越したのではないか。「令和5年度、一般会計歳入・再出の概要」という別の表を見ると、令和4年度の剰余金として21兆3439億円が繰り入れられている。一瞬「この数字は間違いでは」と疑いたくなるほど巨額だ。
ひと言でいうと「日本の財政にはかなりの余裕がある」という気がするのだ。ちなみに直近の黒字額は令和2年度(2021年度)が5兆6966億円、同3年度が3兆1579億円、同4年度が2兆7784億円となっている。同5年度は黒字が確定している。6年度もこのままいけば大幅な黒字だ。要するに5年連続黒字だ。政府・自民党は壁を178万円に引き上げると7〜8兆円の税収減が発生すると主張する。令和2年から4年までの黒字額は合計すると11兆6329億円となる。5年分と6年度分を加えるとこの額はさらに大きくなるだろう。だが政府・自民党は根拠のない減収額しか言わない。ここに政府の隠された意図がある。政府を裏で操る財務省と総務省が連携して減収を強調する。主要メディアも経済学者もコメンテーターも、これに歩調を合わせる。結果どうなるか。日本中に日本経済の先行き悲観論が広がる。デフレが30年、いやもう35年になる。なぜこんなに続くのか。ありていに言えば政府が意図的にデフレマインドを振り撒いているからだ。そのほうが財政の負担が減るのだろう。