鈴木英樹、中道敬
- ともに4年連続の引き上げ、初任給は30万円に-優秀な人材確保へ
- あおぞら銀との提携効果3年後に経常利益100億円、協業拡大も議論
大和証券グループ本社は2025年度に平均5%以上の賃上げを目指す。国内の約1万3000人が対象。また、新卒総合職の初任給は1万円引き上げて30万円とする方針だ。優秀な人材の確保に向け、ともに4年連続のアップに踏み切る。
荻野明彦社長がブルームバーグとのインタビューで明らかにした。労働組合との協議を経て正式に決める。荻野氏は「インフレに負けない賃上げをしてあげたい」とし、「優秀な社員をリテイン(維持・引き止め)したい」とも語った。
長いデフレから脱却しつつある日本経済は、好循環を持続するため賃上げが重要な局面にあり、ここ数年連続で実施している企業の動向に注目が集まっている。賃上げは消費行動や物価を左右し、日本銀行の利上げ判断にも重要な影響を及ぼす。
初任給を巡っては、第一生命ホールディングスが24年4月入社の全国転勤型の総合職を32万1000円に引き上げるなど、金融機関で30万円を超えるケースも散見される。大和証Gでは25万5000円だった21年度から4年で4万5000円の増加になる。
あおぞら銀
あおぞら銀行との提携による利益の押し上げ効果について荻野氏は、3年後に大和証Gの経常利益ベースで100億円を見込んでいると明らかにした。その上で「実際はさらに上を目指したい」と意欲を示した。大和証Gは今年、米商業用不動産向け融資への追加引き当てで業績が悪化したあおぞら銀に約24%出資し、筆頭株主となった。
両社は当初、企業の合併・買収(M&A)や不動産、富裕層ビジネス、新興企業の4分野で協業を深化する方針を打ち出した。現場での検討を重ねた結果、コーポレートファイナンスでも提携効果が大きいと分かり、協業の議論を深めているという。24年3月期の経常利益は1746億円で、単純計算では5%以上の押し上げ効果となる。
M&Aでの協業は、大和証券が扱う案件にあおぞら銀が融資を付けるケースを想定している。荻野氏は「あおぞら銀は買収先企業の資産などを担保とするレバレッジドバイアウト(LBO)融資にノウハウがある。顧客の同意を取った上で、水面下で10件以上の話を進めている」と述べた。