来年度予算の政府案が固まった。ロイターによると「景気回復に伴う税収増を想定することで新規国債発行額は28.6兆円と、17年ぶりに30兆円を割り込む。歳出総額は過去最大の115.5兆円とする方針を固めた」とある。27日に閣議決定する予定。ざっと記事を見た感じでは見どころ満載の来年度予算案と言ったところだ。中でも目を引いたのが税収の見積額だ。当初予算で78.4兆円を見込んでいる。今年度(2024年度)の当初予算(69兆6000億円)に比べると8兆8000億円の増額だ。おそらくこれほど大規模な税収の上積みは過去に例がないだろう。財務書のHPに掲載されている「一般会計税収の予算額と決算額の推移」という表を見ると、昭和60年(1985年)以降で最も規模の大きい増加額だ。この数字を見た途端、財務省の変身をめぐる推測が瞬時に脳裏を駆け巡った。
すぐ頭に浮かんだのは「103万円の壁」論争。国民民主党は先の総選挙の公約として「手取りを増やす」ことを掲げた。具体的な方法論として登場したのが所得控除の大幅な引き上げ。現行103万円(給与所得控除55万円、基礎控除48万円)の控除額を178万円に引き上げるというもの。玉木代表は「取りすぎた税金を国民に返す」とS N Sやメディアのインタビューを通して訴え続けていた。直近3年間の税収額の上振れ(補正後)を見ると令和2度が5兆7000億円、同3年度が3兆1579億円、同4年度が2兆7784億円、同5年度が2兆5000億円となっている。今年度は未定だが、インフレや円安に伴う消費税の大幅な増収が期待されるため、5年連続で大幅な上積みとなる見通しだ。今年度は6月に総額5兆円規模の定額減税を実施した上での税収の上積みである。国の税収は予想を超えた規模で増えていると推測される。
こうした税収の上振れを先取りすべきだというのが国民民主党の主張だ。これに対して財務省は同党の主張を先取りして、来年度予算の税収を78.4兆円と見積もる。いまだかつてない大胆な増額見積もりだ。その上で増収分8.8兆円(今年度当初予算費12.6%増)の使い道を、国債の新規発行を押さえ込むことに割り振った。要する財務省は「これ以上の税収増は来年度見込めません。所得控除をさらに増やすなら、国債の発行額を引き上げるしかありませんよ」と言っているわけだ。世論の大半は依然として財務省が主張する「財政健全化策」を支持しているのだろう。個人的にはこの主張はあまりにも単純すぎると思っている。だが財務省は国債増発と手取り増を天秤にかけることによって、国民民主党の主張にブレーキをかけようとしている。官僚の中の官僚、エリート官僚のやることにしてはあまりにもせこくて、陰湿すぎないか。インフレと円安で苦しむ国民目線の変化は気にならないのだろうか。この組織もK Yだ。