103万円の壁問題をきっかけに日本経済を支配しているのは誰か、うっすらと見えてきた。一言で言ってしまえば石破総理でも、国会でもない。財務省を中心とした官僚機構だ。とりわけ税制がらみでは自民党のインナーと呼ばれるごく少数の政治家と官僚が、税制に関連する全ての決定を左右している姿が見えてきた。その象徴は宮沢洋一自民党税制制調査会長だ。この人政治的な実績はほとんどないが、税制に関しては絶対的な権力を持っている。自民党のナンバー2とも言うべき幹事長がまとめた3党合意に、「釈然としない」と嘯いた。24日から通常国会が始まる。衆院は野党が過半数を占めている。石破総理はどこまで野党に譲歩するのか、通常国会の最大の焦点になる。そんな目先のことよりも、日本経済にとって最大の課題は何か、デフレ脱却、減税など色々ある。そんな中で気がついたのは、日本は市場経済をベースとした資本主義国家ではない、ということだ。では何がベースか。官僚と官僚経済だ。

市場ベースではないことの象徴は、黒田前日銀総裁が進めた異次元緩和に象徴されている。とりわけイールドカーブ・コントロール(Y C C)という金融政策は、市場機能を無視する金融政策だった。オーソドックスな金融政策では短期金利を中央銀行が操作し、長期金利は市場機能に委ねている。黒田前総裁は短期金利に加えて長期金利も日銀の支配下に置いた。この政策の異常性はいま植田総裁によって修正されようとしている。23日、24日に開催される金融政策決定会合では0.25%の利上げが実施される見通しだ。金融政策の正常化は少しずつ前進している。だが、10年に及ぶ市場機能の圧殺は簡単に修復できない。正常化には相当の時間が必要だろう。大変なのは金融政策だけではない。24日に始まる通常国会の最大の焦点は来年度予算だ。総額115兆円。問題はこの予算に計上されていない予算が別にあることだ。外国為替特別会計や年金特別会計など13ある特別会計だ。

令和6年度の特別会計の支出総額は約440兆円(当初、一般会計との重複分を含む)。一般会計の規模は112兆円(当初)。両方合わせれば550兆円を超える。米国の年間予算は約1000兆円。人口が米国の3分の1に過ぎにない日本の予算は過大と言っていいだろう。600兆円程度のGDPに比べても大きすぎる。さらに問題なのは44 0兆円については国会でほとんど審議されていないことだ。中央、地方を含めて官僚機構が勝手に操作している。予算から見ればこの国は明らかに官僚主導国家だ。「日本が自滅する日」(PHP)を読んだ。著者は元衆議院議員の故・石井紘基氏。そこにはこんな記述がある。「税金でつくられた1万(社)を超える行政系列の株式会社などがある。(そのほかにも)公益法人、認可法人とその子会社・孫会社、特殊法人の子会社・孫会社、地方公社、三セクなど」がある。この本が出版されたのは10年前。10年前と状況が変わらないとすれば、日本は確実に自滅の道を歩んでいる。