トランプ氏が第47代の大統領に就任した。就任演説をはじめ就任初日は「独裁者になる」と宣言していた割に、予想外の発表や新たな政策の発動はなく、大統領選挙で主張していた公約の集大成との印象を受けた。「黄金時代」の到来を予言するトランプ氏、元々は自分の公約を忠実に実行するタイプの政治家だ。大袈裟に誇張された発言や身振り手振りとは裏腹に、有権者の予想を裏切らない政治家という特徴がある。総理・総裁になった途端に、手のひら返しで180度政策を転換させたどこかの総理大臣とは違う。余計なことが頭をよぎったが、肝心なのは政策。移民の強制排除、国境警備強化など、不法移民の排除に改めて強い姿勢を示した。とはいえ、推定で1100万人に上ると見られる不法移民の排除は簡単ではない。強制送還する前に収容する施設がまずない。軍隊を活用して移送するにしても莫大な費用がかかる。予算の獲得に向けて上下両院で多数を占めている共和党は団結できるか、足元は必ずしも盤石ではない。
関税は就任初日の発表が見送られたと思いきや、ブルームバーグが今朝10時過ぎに配信した記事によると、「大統領は20日、メキシコとカナダからの輸入品に最大25%の関税を2月1日までに賦課することを計画していると述べた。両国が不法移民と薬物の米国流入阻止に十分な対策を講じていないとする以前からの主張に基づく動きで、かねて賦課の可能性を警告していた」とある。発表はなかったが2月1日までに実行すると「述べている」。これも従来通りだ。エネルギー政策でも公約を忠実に実行しようとしている。パリ協定からの脱退は即日発表。バイデン前大統領が強化したE V推進政策は、ほぼ全て骨抜きになりそう。エネルギー非常事態宣言を発動し、前政権が進めたクリーンエネルギーから化石燃料の活用に大胆にシフトする。世界の潮流である気候変動隊対策や脱炭素には目もくれず「掘って、掘って、掘りまくれ」と、選挙中に吠えまくったフレーズを使って支持者を喜ばせる。
領土拡大の意欲も隠さない。グリーンランドやパナマ運に限らず、カナダ併合説まで改めて持ち出している。まるでプーチンや習近平の強権国家のようだ。その反対に性別は男と女に限ると、センシティブな問題を断定的に結論づける。前政権が推進したDEI(Diversity=多様性、Equity=公平性、Inclusion=包括性の略称)は撤回、民主党の政策をすべてひっくり返そうとする。もう一つ注目すべきはキャリア官僚の人事に踏み込んだことだ。新政権は国務省のキャリア官僚に辞任を要求したと報道されている。米国では通常、大統領が指名する「政治任用者」は政権交代に合わせて入れ替わる。対象者は約4000人といわれる。だがこれ以外の高級官僚は政権が変わっても交代したり辞任したりしない。そんな中でトランプ氏は今回キャリア官僚に辞任を要求しているというのだ。理由はディープ・ステート(DS=闇の政府)の一掃だとされる。さてどうなるか、この先。初日はあれやこれや、トランプ氏の持論がほぼ達成されたようだが・・・。